T.Fさん 中学校教諭・広島県呉市 取材/永谷正樹

T.Fさん 中学校教諭・広島県呉市
取材/永谷正樹

 平成30年6月28日から7月8日にかけて、広島県と岡山県を中心に大きな被害をもたらした西日本豪雨により、T.Fさんが暮らす広島県呉市でも断水が続き、ほぼ復旧したと言えるまで約1カ月もかかった。

 県内の中学校で教鞭を執っているFさんは、職場へ通うことはできたものの、断水した約2週間、給水場に指定された自宅近くの中学校まで何度も往復した。

「それまで『物を大切に』と生徒にも話してきましたが、給水場を往復する中で、それは上辺だけだったような気がしました。当たり前と思っていた水のありがたさを実感しましたね」

 震災後の広島県における被害状況は地元メディアが盛んに報じ、フェイスブックでも、普段からお世話になっていた生長の家広島教区の寺川昌志教化部長(*1)が発信していた。被災した信徒の自宅に自ら出向いて流入した泥を掻き出したり、家財道具を運び出す様子を記事で見るたびに、「何か自分にできることはないか」とFさんは考えていた。そんな時、生長の家広島教区でボランティアを募集していることを知り、夏休み中の8月に2回参加した。

siro118_rupo_img2ボランティア活動で学んだこと

 Fさんが生長の家の教えに出合ったのは5年前のことだった。母親が生長の家の教えを信仰しており、その年の9月に、生長の家宇治別格本山(*2)で開催される「幸福な結婚をするための練成会(*3)」の案内状が自宅に届いたのを見て、参加してみようと思ったのだ。

 当時、Fさんは職場の人間関係で悩み、「結婚をすれば、その煩わしさから逃れることができるのでは」という思いもあったという。練成会では、両親や先祖の愛に護られていることに感謝する大切さを学び、心に明るい光が差したような気持ちになった。

 それ以降、宇治別格本山の練成会に毎月参加して教えを学ぶようになり、人のお役に立ちたいという気持ちが芽生えてきた。生長の家青年会(*4)の活動にも加わり、クリーンウォーキングなどの行事にも積極的に参加した。

「教師として、ただ生徒たちに勉強を教えていれば良いのかと考えるようになりました。自分がボランティアに参加することで、被災地の生の声を伝えたいという気持ちもあったんです」

 Fさんがボランティアで訪れたのは、広島市と呉市の境にある安芸郡坂町小屋浦地区。地方講師(*5)の吉川三郎さんをはじめ、多くの信徒が暮らす地域で、町へ足を踏み入れた時には、あまりの惨状に言葉を失うほどだった。

「町全体が土砂に埋もれているような状態でした。一人暮らしの高齢者の方も多いので、手つかずのままになっている家もありました」

 約10人で信徒宅を訪ね、家財道具を外へ運んだり、家の中の泥をスコップで掻き出したりする作業をすることになった。山口教区から駆けつけてくれた青年会員もいて、力仕事は主に男性が担当し、Fさんたち女性は食器を運んだり、写真に付着した泥を拭いたりする軽作業が中心だった。とはいえ気温30度を超える猛暑の中、照りつける太陽に体力が奪われた。

「熱中症に注意をしながら、小刻みに休憩を挟んでの作業でした。休憩中に、被災された吉川先生や信徒さんがとても明るく接してくださり、逆に私の方が力づけられました」

siro118_rupo_img3 献身的に作業をするFさんたちの姿に感激し、ある信徒は20歳の孫を広島教区青年会に紹介してくれた。今では青年会に入会し、行事などにも参加しているという。

 その翌週もFさんは小屋浦地区を訪れた。この日は、愛知教区と大阪教区からも生長の家の青年会員が駆けつけ、家の中から泥を掻き出す作業などを行った。肉体的にきつい作業だったが、少しでも早く元通りの生活を送れるようにと祈りながら体を動かすうち、一緒に作業している仲間たちの善意や、前回と同様に明るく接してくれる地元信徒たちへの感謝の思いに包まれた。

「やり場のない悲しみや将来への不安で憔悴しきっていてもおかしくはないのに、なんてすばらしい人たちなんだろうと感激しました」

 9月に新学期が始まると、Fさんは教え子たちに、自らボランティア活動をしたことを伝えた。皆、真剣に耳を傾けていたという。それがきっかけとなって、後日、保護者とともにボランティアに出かけたという話を生徒から聞いた。

「私の思いが伝わって、とても嬉しかったです。災害をきっかけに、普段は当たり前と思っていた様々な恩恵の有り難さを改めて実感しました。感謝の気持ちを忘れず、私自身もっと人のお役に立つ人間となって、生徒たちに示すことができたらと思っています」

*1 生長の家の各教区の責任者
*2 京都府宇治市にある生長の家の施設。宝蔵神社や練成道場などがある
*3 合宿形式で教えを学び、実践するつどい
*4 12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*5 教えを居住地で伝えるボランティアの講師