大内田展子(おおうちだ・のぶこ)さん  75歳 福岡県飯塚市

大内田展子(おおうちだ・のぶこ)さん 
75歳 福岡県飯塚市

 およそ15坪ある庭に所狭しと置かれたプランターの草花や苔玉(こけだま)。植栽を愛おしそうに手入れしている大内田展子さんにとって、植物は心に潤いを与えてくれる掛け替えのないものだ。

「もみじとか、秋海棠(しゅうかいどう)のような素朴な山野草に心惹かれます。お茶の席に一輪挿しにして飾ると、素敵な空間になるんですよ。苔も好きで、様々な苔を軽石に着生させると、まるで原生林のような味わいが出てきて、心が癒されます」

私の仕事は唯喜ぶことである

 大内田さんは、庭の手入れで出る茎や葉っぱ、台所の生ゴミなどを、庭に掘った穴に米ぬかをまぶして埋めている。それをミミズやダンゴムシなどが食べて分解することで、植物が元気に育つふかふかの土ができる。

上:「屋根から落ちる雨水を瓶にためて、植物の水やりに使っています」/下:庭の植物を愛でる

上:「屋根から落ちる雨水を瓶にためて、植物の水やりに使っています」/下:庭の植物を愛でる

「毎年こぼれ種から、三つ葉やわさび菜、セロリ、青ジソ、赤ジソなどが生えてきて、スーパーなどで売られているものよりも香りが強く、植物の生命力を感じます。近所からいただいた梅と、庭の赤ジソで梅干しを漬けたり、お味噌やらっきょう漬けなども手作りしています。そんな自然の恵みを料理に使う時、『私たちを生かしてくれている神様、ありがとうございます』と感謝の言葉が出てきて、神様の御心と波長が合ったような幸せを感じます」

 そんな平和な心でいられることが何よりもありがたいと話す大内田さんは、結婚した当初、義母の厳しい口調に耐えられず、夫に相談しても、「普通に接しているだけだから」と取り合ってくれないことに悩んでいた。しかし、実母の勧めで「人間は神の子」と説く生長の家の教えに触れ、義母も本当の姿は神の子であると気づいた時、義母の厳しい口調は実の娘のように接してくれようとしていたのだと思えるようになった。次第に夫への不満も消え、その頃には既に他界していた義母にも心から詫びることができた。

 その後、「私の仕事は唯喜ぶことである」という言葉を、生長の家創始者である谷口雅春師(*1)の著書で読み、「朗らかに笑って生きよ」という教えが心の指針になった。すると、周囲の人も笑顔になり、それはまた自分の喜びともなった。最近は空きビンを利用して多肉植物のテラリウムを作ったり、余った苗のポットで植物の寄せ植えなどを育て、周囲の人にプレゼントして喜ばれることが嬉しいと話す。

物のいのちを生かす

上:綿糸から編んだストールは、大内田さんのお気に入り/下:数弥さんのシャツをリメイクしたエプロン

上:綿糸から編んだストールは、大内田さんのお気に入り/下:数弥さんのシャツをリメイクしたエプロン

 庭仕事ができない雨の日は、綿糸からストールを編んだり、シャツをエプロンにリメイクしたり、布の端切れから枕カバーを作ったりしている。

「何に作りかえようかと想像する時間も好きですね。友人からもらった反物(たんもの)でズボンを縫って、その友人に見せてあげると、驚きながらとても喜んでくれるんです。その時、誰もが物を無駄にしたくないという思いを持っているのだと感じました。私も端切れを料理の油汚れの拭き取りに使い、物のいのちを最後の最後まで生かして使い切るようにしています」

 大内田さんが物のいのちを意識するようになったのは、谷口純子・生長の家白鳩会(*2)総裁の著書を読んだりして、日々の暮らしのなかで、工夫しながら少ない物で生活を楽しもうとする様子に影響を受けているからだという。

「谷口純子先生は、ただ生活を楽しむだけではなく、自然環境を守るために『持ち過ぎない』『買い過ぎない』『捨てない』という“3ない生活”を提唱されていて、私も自然や人が喜ぶ生活を送るように心掛けています」

 心穏やかに生きていくことが神の御心に適う生き方であり、そのためには一人ひとりが、自然を愛で、その恵みに感謝することが大切ではないかと、真剣な眼差しで話してくれた。

*1 昭和60年昇天
*2 生長の家の女性の組織