大原恵子さん (62歳) 山口県宇部市 写真提供/大原恵子さん

大原恵子さん (62歳) 山口県宇部市
写真提供/大原恵子さん

 私は毎朝、仕事に行く夫のお弁当を作っています。新型コロナウイルスの影響で、夫は外食を控えるようになり、昨年(2020)からお弁当を持っていくようになりました。

 お弁当のおかずはフライパンで一度に5品を料理します。下ごしらえをした様々な具材をクッキングシートや小分けのボウルを使って同時に料理するので、洗い物が少なく、時間も短縮できて嬉しいです。調理時間は10分ほどで、エネルギーの節約にもなっています。

 お弁当には、夫が家庭菜園で種から育てた無農薬・有機栽培の野菜を使っています。愛情をもって野菜のお世話をする夫の姿に優しさを感じ、その野菜を使ってお弁当を作れることは幸せです。庭で収穫した新鮮な野菜には野菜本来のおいしさがあり、愛おしく感じます。ニンジンが苦手だった夫ですが、自分で育てたニンジンは美味しそうに食べます。そんな姿を見て、料理がさらに楽しくなりました。

 人が健康的に生きていく上で一番重要なのは食事だと考えていた私は、30代の頃に生活協同組合に加入し、他の組合員さんと一緒に様々な活動をし、特に生産者や専門家を招いて食の安全に関する勉強会や試食会を開きました。勉強会では、地元のものを食べるのが健康に良いという考えや、一部の食品添加物には発がん性物質が含まれていることなどを学び、食材を注意して選ぶようになりました。

「夫から『美味しかったよ!』と言ってもらえるのが、嬉しいです」

「夫から『美味しかったよ!』と言ってもらえるのが、嬉しいです」

 さらに、生長の家では宗教的観点から食と環境問題について学び、地球環境への負荷を減らすために、外国から運ばれてくる輸入食品ではなく、地元産の食材を選ぶ地産地消や、旬の食材を選ぶ旬産旬消、お肉を使わないノーミートを実践しています。肉食には動物の命を犠牲にするという問題だけでなく、食肉産業から大量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化の原因の一つになっていることも学びました。

 夫にお弁当を作ることは、2011年から9年間、夕食をほとんど毎日一人で食べなければならなかった夫への、感謝の表現の一つでした。介護が必要となった実家の母の面倒を見るために、月に20日間ほど夜は私が実家に泊まり、翌朝自宅に帰るという夫婦すれ違いの生活が続いたのです。時には、夫と喧嘩になったこともありました。それでも自宅に戻ったときは、一人で頑張ってくれている夫のために何かしてあげたいと、健康を考えた夕食を用意しました。

1つのフライパンで5品のおかずを調理する。「凍み豆腐などを使って、食感も楽しめるよう工夫しています」

1つのフライパンで5品のおかずを調理する。「凍み豆腐などを使って、食感も楽しめるよう工夫しています」

 夫も私が家を空けている時は、自分で食事の用意をしてくれたので、心置きなく母を介護することができました。夫と私が共に「人間は神の子である」という生長の家の教えを信仰し、お互いを神の子として拝み合っていたから、協力し合えたのだと思います。

 母は1年半前に骨折して入院し、昨年初めから新型コロナウイルス感染防止のために面会ができなくなり、臨終にも立ち会うことができませんでした。それが、今も心残りです。

 そんな寂しさを紛らわせてくれたのは、毎朝のお弁当作りでした。お弁当作りをすることで、不思議と心が整い、夫がおいしく食べてくれると思うと気持ちも明るくなっていきます。何か問題があってもそれを掴むのではなく、明るいことや嬉しいことに意識を向けて、問題を心から放つことが大切だと、夫のお弁当作りを通して実感しています。