山下貴大(やました・たかひろ)さん・32歳 香川和貴(かがわ・かずき)さん・34歳 山口加奈子(やまぐち・かなこ)さん・35歳 取材●長谷部匡彦(本誌) 撮影●遠藤昭彦

香川和貴(かがわ・かずき)さん・34歳
山口加奈子(やまぐち・かなこ)さん・35歳
山下貴大(やました・たかひろ)さん・32歳
取材●長谷部匡彦(本誌) 撮影●遠藤昭彦

 生長の家大阪教化部(*1)の有志の職員は、2017年4月から、地元のボランティア団体である、NPO法人「ふーどばんくOSAKA」で、ボランティア活動をするようになった。同教化部職員の山下貴大さん、香川和貴さん、山口加奈子さんに、ボランティアの喜びについて聞いた。

──「ふーどばんくOSAKA」で、ボランティア活動を始められたきっかけを教えてください。

香川 2017年当時、生長の家大阪教化部の事務局長だった河野知足さん(現・生長の家国際本部職員)から、希望者を募って、教化部の休館日にフードバンク(*2)のボランティア活動をしたい、という提案があったんです。最初は、フードバンクが何をしているところなのか知らなかったんですが(笑)。

山下 以前から、捨てられたり、殺処分されそうな犬や猫たちを助ける募金活動や、新しい里親を探すイベントの手伝いなどをしていたこともあって、フードバンクのボランティア活動に参加するのに、とくに抵抗はなかったですね。

──実際にボランティア活動をされてみて、感想はどうでしたか?

山口 食料支援を受けている児童養護施設などに、「ふーどばんくOSAKA」が用意した食料を届けたりしています。その時に、様々な事情で家族と暮らせずに施設にいる子どもたちの様子を目のあたりにし、なんともいえない気持ちになりました。

「ふーどばんくOSAKA」でのボランティア活動以外にも、生長の家大阪教化部周辺のクリーンウォーキングを定期的に行っている

「ふーどばんくOSAKA」でのボランティア活動以外にも、生長の家大阪教化部周辺のクリーンウォーキングを定期的に行っている

香川 余っている食料を、生活に困っている人々に届ける仕組みがあることに、興味がわきました。でも、届けた食料の中にお肉が入っていたんです。お肉を届けること自体には問題はないと思うのですが、肉食用の家畜を育てるために、穀物が飼料として大量に使用されており、世界の貧しい国々の穀物を間接的に奪うことに繋がってしまうと教えられていましたので、食べ物に困っている人にお肉を届けるということには、少し自己矛盾を感じました。

山下 私は以前、スーパーで働いていました。賞味期限が迫った食品を廃棄する側にいたので、食品ロスをなくすための活動があることが純粋に嬉しかったですね。 

  食料を受け取っている方の中には、明日食べるものにも困っている人がいるので、すぐには解決できない問題ですが、世の中全体が、肉食のような間接的に他から奪う生き方を変えていかないと、世界の貧困問題の解決に繋がらないと感じました。

山口 出来れば、お肉とか、賞味期限が迫っている食料などではなくて、栄養価の高い有機野菜を届けられれば良いなと思いました。その方が食べてくれる人たちの健康にも繋がると思うんですね。

困っている人を助けたい

──新型コロナウイルスの影響下の大変な時期も、ボランティア活動を継続されていたと伺いましたが……。

山下 緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が出ていた時期は活動できませんでしたが、今でも月1回の活動を続けています。

  私が続けている理由は、高校生の時から学んでいる陶芸の考え方があるからです。陶芸は使ってくれる人の手のサイズなど、相手のことを考えながら作るんです。技術も大事ですが、相手を思いやる心が一番大切なんですね。生長の家でも「自他一体(*3)」と学び、すべての人を神の子として拝むので、他人事ではないという思いが生まれてくるんです。

令和3年11月9日のボランティア活動にて。左から香川さん、山下さん(画像提供:山下貴大さん)

令和3年11月9日のボランティア活動にて。左から香川さん、山下さん(画像提供:山下貴大さん)

山口 私は小学生の頃に生長の家の教えに触れて、生命学園(*4)では「日本と世界のお役にたちます」という言葉を唱えていたんです。この言葉の影響かもしれませんが、人のお役にたって、誰かが喜んでくれるなら良いなと思っています。それに、私自身はボランティア活動自体を楽しむという感覚で続けていました。

香川 生長の家の教えを信仰している両親や祖父母が、人のために何かをしている姿を見てきたので、私にとっては感覚的に当たり前のことなんです。周りの人たちに自分を良く見せようとしたり、人のためにとか、特別なことをしようといった意識もないですね。無理をせずに参加できる時に参加する、という姿勢だから続けられているんだと思います。

愛を与えること

──ボランティア活動を検討している人に、アドバイスをお願いします。

山口 貧困問題については知識として知っていましたが、実際の活動を通して、寂しい思いをしている人がたくさんいることを知りました。私の原動力となっているのは、生長の家の「神は愛なり」という教えです。だから困っている人がいたら気になって声をかけてしまいます。

 大切なのは、相手の話をよく聴いて、その心に寄り添うこと。特別なことをしなくても、それだけで相手は自分が受け入れられたと感じ、安心すると思います。

山下 人のために何かしようとするとき、相手の人がどう思うか? 結果がどうなるか? と考えて躊躇してしまうこともあると思います。でも、未来のことについて取り越し苦労をしても仕方がないですよね。

 生長の家では「現象は心の影であって本来ない。神が創造された実在の世界だけがある」と説いています。神様が創造された本当にある世界は、本来完全円満で、思い悩む必要がないし、物事の本質である善(よ)いところに注目することが大切なんです。「案ずるより産むが易し」という言葉があるように、実際に行動してみたら、意外と出来てしまうものだと思います。

香川 ボランティア活動を、特別なこととして考えないことではないでしょうか。誰もが持っている、神の子としての本性(ほんせい)である善なる心で、素直に感じた通りに動けば、社会の役に立っているという喜びがきっと得られると思います。

*1 生長の家の布教・伝道の拠点
*2 まだ食べられる食品等を、それを必要としている人や団体に無償で提供する活動のこと
*3 自分と他者と分かれているように見えても、本来神のいのちにおいてすべては一体であるという教え 
*4 幼児や小学児童を対象にした生長の家の学びの場