H.Yさん (59歳) 大阪府堺市

H.Yさん (59歳) 大阪府堺市
取材/多田茂樹

食の安全と環境問題に関心を持つ

 さん夫妻は、生まれも育ちも関西だが、結婚後は夫が勤務する建設会社の本社がある東京で暮らしていた。夫の大阪への転勤を機に、堺市で暮らすようになったのは平成10年、36歳の時だった。

 東京に住んでいた頃から食の安全に興味を持ち、環境問題にも関心をもっていた。日頃から生活協同組合で安心安全な食材を共同購入し、無農薬の米や野菜を選び、地球環境に配慮した暮らしを心がけてきた。

 日常の買い物では、プラスチックやビニールのごみを減らすため、レジ袋が有料化になる以前からマイバッグを持参し、調味料は瓶に入った商品、洗濯石鹸は紙袋に入った粉石鹸を購入してきた。雑誌や新聞などの紙類、空き缶、空き瓶、牛乳パックなどは分別してリサイクルやごみとして出していた。不要になった子ども服、おもちゃ、本などはフリーマーケットやバザーなどに出品して再利用できるようにしていた。

 ところが、堺市に転居した当時は、ごみ収集の際の分別がないことに驚いた。

「ごみ収集日には、プラスチックも生ごみも使用済み乾電池も、同じビニール袋に入れて出すことになっていたんです。本当にこれでいいのかなと疑問に感じ、悩んでいました」

 そんな時、チラシで見つけた生活協同組合の「暮らしと環境委員会」に参加。そこで知り合った生長の家信徒の女性から先祖供養の大切さについて教わり、母親教室(*1)に誘われた。初めて母親教室に参加した時のことを、Hさんは今も鮮明に覚えている。

「人間は完全円満な神の子で、運命はコトバによって創られるのだから、良き言葉を選んで話すことが大切と教えられました。その頃、実家に仏壇がなかったことが気になっていたので、それについて尋ねると、『大地は神様、根は先祖、幹は両親、枝葉は子孫』という説明を聞いて先祖供養の大切さを知ったんです。親孝行や夫婦調和の大切さも教えられて、涙があふれるほど感動し、さっそく義父母の両親と実家の両家の4家を祀(まつ)り、先祖供養を始めました」

 それがきっかけで、Hさんは平成16年に白鳩会(*2)に入会した。

シュロやヘチマのたわしなどを使用

シュロやヘチマのたわしなどを使用
(撮影/堀 隆弘)

プラスチックごみが増えていく悪循環に巻き込まれないために

 普段から、合成洗剤や加工度の高い食品を避け、家庭菜園で野菜を育てるなど、地球環境に配慮した暮らしを続けているが、特に心がけているのは、使い捨てプラスチックのごみを出さないようにすること。

「プラスチックのごみを減らすために最も有効なのは単純な話でして、プラスチック容器が使われている食品をできるだけ買わないようにすればいいんです。我が家では生協で、できる限りガラス瓶入りの食品を購入するようにしています」

 スーパーでは野菜などの多くにラップが掛けられていたり、ビニール袋に入った状態で売られ、食品トレーも多用されている。醤油や食用油などもペットボトルに入った状態で売られている。

 これではプラスチックごみは増える一方だが、そうした悪循環に巻き込まれないため、ラップやビニールが使われている食材の購入を極力避けている。調味料や牛乳もガラス瓶入りのものを購入し、使い終えた瓶はリユースするために回収してもらっている。

「それでも全てをガラス容器入りにするのはできないので、プラスチック容器は必ずリサイクルごみとして出し、再利用が可能なようにしています」

 H家の台所を見ると、食品棚や引き出しにペットボトルはなく、ビニール製の袋もほとんど見当たらない。調味料がストックされている引き出しには、広口のガラス瓶がずらりと並び、分類してあるので中身も一目瞭然だ。プラスチック製のラップの代わりに、手作りの蜜蝋ラップをビンのフタや容器のカバーとして使い、まだ使ったことのない友人にあげたりして、蜜蝋ラップの“普及”にも努めている。

 稀にガラス瓶の牛乳を飲み切ってしまった場合は、紙パック入りのものを買うこともあるが、そんな時でも空になった紙パックを捨てることはなく、プランターなどにして使っている。できるだけ再利用して、ごみを減らそうとしているのだ。

繰り返し使えるリユース瓶を使用した牛乳を購入している。紙パックはそら豆などを育てる容器として利用

繰り返し使えるリユース瓶を使用した牛乳を購入している。紙パックはそら豆などを育てる容器として利用 (撮影/堀 隆弘)

 谷口純子・生長の家白鳩会総裁が提案されている、自然と調和したライフスタイルへの転換の取り組みに刺激され、野菜作りにも挑戦している。

「我が家の裏庭はわずか一畳ほどの広さしかありません。でも、プランターで野菜作りが十分できると知り、ブロッコリー、そら豆、スナップエンドウなどを育て始めました」

 取材のこの日、プランターにスナップエンドウが育っていた。つるを絡ませるネットには、夫の着古した綿百パーセントのワイシャツを切って作った紐が使われていて、プラスチックを減らす工夫がなされている。

 Hさんが心がけているような家庭での小さな取り組みでも、賛同して実行する人が増えれば、使い捨てプラスチックは減っていくに違いない。地球のためになる「いいこと」を実践するライフスタイルには、大いに学ぶべきところがある。

*1 母親のための生長の家の勉強会
*2 生長の家の女性の組織