『いのちの環』特集_155_写真1

自宅2階にあるアトリエで、クラフトバンドを使った作品づくりを楽しむ鈴木さん(写真/永谷正樹)

鈴木道子さん │74歳│静岡県浜松市
取材・写真/永谷正樹

時間を見つけてコツコツと

 
 浜松市郊外にある鈴木道子さんの自宅を訪ねると、2階の一室がアトリエになっていた。

「毎日、ここで好きな音楽を聴きながらクラフトバンドを使った作品づくりを楽しんでいます」

 嬉しそうに語る鈴木さんの横には、近くに住む2人の孫の姿があった。色とりどりのクラフトバンドが並ぶ鈴木さんのアトリエは、孫たちにとって格好の遊び場でもあるようだ。

 クラフトバンドのルーツは、米袋を縛るための口紐。紙でできているものの、大量の米が入った米袋を支えることができるだけに、丈夫に作られているのが特長だ。現在は古紙を再生して、主にクラフト用の材料として販売されている。

『いのちの環』特集_155_写真4

 使う道具は、バンドをカットするハサミや、バンドを貼り付けるための木工用ボンド、バンドを固定する洗濯バサミなど身近なものを利用できる。そのため、エコロジーへの関心の高まりとその手軽さが受けて、クラフトバンドはここ数年来ブームとなっている。

 鈴木さんがクラフトバンドを始めたのは、10年ほど前。宮崎県にある実家へ帰省した時、妹から勧められたのがきっかけだった。

「もともと私は物を作るのが好きで、手芸やレース編み、籐細工、ビーズ細工などをやっていたんですが、色使いやアレンジが多彩なクラフトバンドに感動し、すぐに始めました。今はクラフトバンド一本で、毎日、時間を見つけてはコツコツと作っています」

『いのちの環』特集_155_写真3

孫たちと(写真/永谷正樹)

クラフトバンドによる小物作り

 
 バンドの幅は約14ミリ。このまま使うこともあれば、割いて細くして使うこともある。石畳のように四角を何度も編み込んでいく「四つだたみ」や、さまざな模様を楽しめる「網代(あじろ)編み」、1~2本のバンドでうろこのように編み込んでいく「うろこ編み」など、クラフトバンドには多種多様な編み方がある。

「3本のクラフトバンドで花の形を作っていく『花結び』もありますし、それぞれ異なる編み方をしたバンドを組み合わせて一つの作品を作っていくのも楽しいです」

 作業テーブルの上には、これまで製作した小さなバッグや鍋敷き、箸置きなどが並べられていたが、どの作品もウクライナの国旗の色である青と黄色のバンドが使われていた。

「現在、生長の家が取り組んでいるウクライナへの支援活動『P4U──ウクライナに平和を*1』の一環として、ウクライナの国旗の色を使ったさまざまなクラフトバンドを手作りすることで友愛の情を表現しました」
 *1=詳細は生長の家公式ホームページ内、「P4U──ウクライナに平和を」特設サイトを参照

『いのちの環』特集_155_写真2

籠や鍋敷き、箸置きなど、ウクライナの国旗の色である青と黄色のバンドを使った作品(写真/永谷正樹)

「決して人を憎んではいけない」

 
 生長の家の教えは、母親から伝えられたが、青少年練成会*2に参加していた妹たちと違い、鈴木さんは関心がなかった。縁が生まれたのは、31歳の時。24歳で結婚し、その7年後に現在の家を新築したある日、新聞に掲載されていた生長の家講習会の広告がふと目に留まった。
 *2=合宿形式で教えを学び、実践するつどい

「その時、母が信仰していたことを思い出して、きっと母が喜ぶと思って参加したんです。光明面を見る明るい生き方を説く教えに惹かれ、こういう話なら聴いてもいいなと思いました」

 その後、講習会に参加したことを喜んでくれた母親の勧めで、生長の家静岡県教化部*3で教化部長*4の講話を聴き、「人間は神の子である」という教えに感動した。それを機に、度々教化部に足を運び、白鳩*5会員となって信仰に励むようになった。
 *3=生長の家の布教・伝道の拠点
 *4=生長の家各教区の責任者
 *5=生長の家の女性の組織

「生長の家の教えを学ぶうちに、母が口癖のように言っていた『どんな問題が起こっても、決して人を憎んではいけないよ』という言葉が心に沁みるようになりました」

『いのちの環』特集_155_写真5

仲間からの反応が大きな励みに

 
 昨年(2022)3月には、SNIクラフト倶楽部*6へ入部し、Facebookにクラフトバンドで製作した作品を投稿すると、全国各地の仲間から数多くの「いいね!」やコメントが寄せられ、大きな励みとなった。
 *6=生長の家が進めているPBSの活動の一つ

「それまではずっと一人で作ってきたので、自己満足で終わっていましたが、今は私の作品を見て多くの人々が喜んでくださるので、それが嬉しくて、新しい作品を作る原動力になっています」

 そんな鈴木さんは、これまで製作した作品のほとんどを誰かにプレゼントして、喜んでもらっている。

「友人や知人の顔を思い浮かべながら、次は誰にあげようかと考えながら作るのが楽しいんです。これからも、物のいのちを生かしたクラフトバンドによる小物作りを楽しく続けていきたいと思っています」

inoti155_rupo_4