
前田智仁(まえだ・ともひと)さん
北海道旭川市・専門学校生
取材●長谷部匡彦(本誌)撮影●加藤正道
今年(2020)4月から、旭川市内の調理士専門学校に通っている前田智仁さんは、和食、洋食、中華料理をはじめ、製菓、製パンの調理技術のほか、栄養学や食品衛生について学んでいる。卒業するまでに、調理士免許、食品衛生責任者、食品技術管理専門士の資格を取得するのが目標という。
「いまは、調理に関する基礎的な知識や技術を中心に学んでいます。食材は一つひとつに個性があって、切り方ひとつで火の通り具合も変わり、それによって味も食感も変化するので、調理は本当に奥が深いと思います」
前田さんは小学2年生の時、父親に連れられて、当時住んでいた千葉県で行われた小学生練成会(*1)に参加し、「人間は神の子で、本当の姿は円満完全である」という生長の家の教えを学んだ。その後、父親の仕事の関係で中学1年生の時に山梨県へ、さらに高校受験の時に北海道へ引っ越したが、生長の家の教えが、いつも心の支えになっていると話す。
「練成会で教わった『実相(*2)円満完全』という言葉を唱えていると、自分は素晴らしい存在なのだと思えるようになり、物事を前向きに考えられるようになりました。中学3年生の10月に北海道へ引っ越しが決まった時も、急遽進学先を旭川の高校に変えたので不安はありましたが、受験勉強の合間や試験当日、各科目の試験前に、この言葉を唱えていると、気持ちが落ち着き、無事志望校に合格することができました」

「時折、家族のために料理をするようになりました」
中学、高校と野球の部活動に励んできた前田さんは、昨年行われた高校生活最後の試合の光景が心に焼き付いている。
「北北海道大会の予選で、前年度の甲子園出場校とあたってしまったんです。実力は相手校が上でしたが、チーム一丸となって試合に臨んだら、延長13回までもつれ込む白熱した戦いになりました。いつも監督からは『和(わ)が力(ちから)』という言葉で、協力し合うことの大切さを教えられていて、みんなで力を合わせると凄い力が発揮できるんだと実感しましたね」
野球部を引退後、それまでサポートしてくれていた母親や家族に、感謝の気持ちを込めて料理を振るまったことが、その後、料理人をめざすきっかけとなった。
「部活を引退するまで毎週土日は練習で、朝早くから母は朝食と昼食のお弁当を作ってくれていました。簡単ですけど、ピーマンやナス、舞茸などの天ぷらを家族のために作ったら、『衣がサクサクして美味しいね』とみんなが喜んでくれました。美味しそうに食べてくれる表情が印象的で、料理することが好きになったんです」
いま前田さんは、イタリアンの料理人として働く夢を描いている。
「専門学校を卒業後、どういったお店で働きたいとか、いずれ自分のお店を持ちたいとか、先のことはまだ、具体的には考えていませんが、お客様に料理で感動してもらい、何度も足を運んでもらえるような料理人になりたいです」
*1 合宿して教えを学び、実践するつどい
*2 神によって創られたままの完全円満なすがた