老人介護施設で介護福祉士として働いているM.A.さんは、職場での人間関係に悩み、ストレスから過食や拒食となり、体調を崩すようになった。そんな自分を変えたいという思いで、生長の家の練成会(*1)に参加したのをきっかけに、気持ちが前向きになり、体調も人間関係も改善していった。

M.A.さん 山口県岩国市・26歳・介護福祉士 取材●長谷部匡彦(本誌)

M.A.さん
山口県岩国市・26歳・介護福祉士
取材●長谷部匡彦(本誌)

 山口県岩国市を流れる錦川(にしきがわ)は、世界的にも珍しい5つの木造の橋が連なってできた錦帯橋(きんたいきょう)のかかる県内最大の河川。春には川辺に植えられた桜並木が美しく咲き、夏には錦帯橋の上空に花火が打ち上がり、川面に映る光景は圧巻という。

「自宅から歩いていける距離なので、ときおり気分転換にここに来ます。綺麗な川の流れや景色を眺めていると心が癒されますね。でも、ストレスが溜まってきたらアイドルグループNEWSの『生きろ』や『UR not alone』を聞いています(笑)。歌詞がとても良くて、私の心に勇気を与えてくれる大切な応援ソングなんです」

 そう話すM.A.さんは、市内にある介護福祉サービス施設で働いている。今年(2020)1月、介護に関する専門の国家資格である介護福祉士の資格を取得し、仕事にやりがいを感じている。

「職場では、利用者さんとともに笑顔で過ごすことが大切だと思っています。ただ笑顔をつくるだけでも、NK(ナチュラル・キラー)細胞(*2)が活性化され、免疫バランスが整うと言われているんですよ。いまは新型コロナウイルスの感染予防のため、いつもマスクを着用しているので、私たち職員の表情が利用者さんには分かりづらいですが、目元に笑顔をつくって安心してもらえるように心掛けています」

 笑顔が素敵なMさんだが、以前は職場の人間関係で悩み、転職を2回経験した。

ストレスから体調を崩す

 高校卒業後、職業訓練校を経て最初に働き始めた介護福祉施設では、利用者に対して笑顔で接することはできたものの、職場の先輩たちへの苦手意識が拭えなかったと振り返る。

hidokei127_rupo_2 そんな心境でいるとき、大好きだった祖父がMさんの成人式の翌日に亡くなり、さらに心が沈んでしまった。先輩たちに心を開くことができず、徐々に孤立感を覚えるようになり転職したが、次の職場でも同じように人間関係で苦しんだ。

「なにか特別な理由があった訳ではないのですが、先輩の看護師さんから、『利用者さんとしゃべりすぎ』とか『ゆとり世代だよね』とか、何かにつけて咎められました。その看護師さんと話すだけでも、お腹が痛くなって、何か言われるんじゃないかと常に身構えるようになり、自分でも分かるくらいに脈が速くなって動悸がするようになったんです。そんな症状が、他の年上の方と話す時にも、同じように出てくるようになりました」

 そんなストレスを発散するため、過食になり、急激に体重が増えた。さらに眠りも浅くなって、十分な睡眠が取れなくなり、体調を崩すことが多くなった。今度は反対にげっそりと痩せてしまい、自分に限界を感じたMさんは、1年も経たずに2度目の転職をした。

「小さい頃から小食で、風邪も引きやすく熱が出ると食欲もなく、食べても戻してしまうことが多かったんです。そのため、病院で点滴を打ってもらうことも多くて、学校も休みがちでした。2回目に転職した時は、年上の人への恐怖心が強くなって、どうしていいのかわかりませんでした。次の転職先でも前と同じことにならないように、何かを変えたくて、生長の家の練成会に参加したんです」

転機を迎える

 Mさんは幼児の頃から、生長の家の教えを信仰する両親や祖母に連れられて生命学園に通い、その後も小学生練成会に参加したことがあった。

「優しくて大好きな祖母が生長の家の教えを信仰していたので、参加するのが楽しみでした。小学生の頃は体調を崩しても、練成会で教えてもらった、『わたしは神の子、光の子、なんでもできます、強い子、良い子』という言葉を唱えていると、不思議と気持ちが元気になったのを覚えています」

 平成28年4月に参加した練成会の浄心行(*4)では、用紙に前の職場で看護師から咎められたことへの憤りを書いた。すると、しつけに厳しかった父親に対するわだかまりが思い出されてきて、そのことも書き出していった。

 聖経『甘露の法雨』(*5)の読誦のなか、その紙を焼却し、その後、他の参加者とともに講師の先導にしたがって、「お父さん、ありがとうございます。お母さん、ありがとうございます」と唱え続けた。そのうち訳も分からず涙が溢れてきて驚いた。

「涙を流すなんて久しぶりだったんです。それまで人に弱みを見せまいと人前では泣いたことがなかったんですが、泣き終わった時は心が軽くなっていました。そんな体験をしたので、それまで父が納めてくれていた聖使命会員(*6)の会費を自分で納めるようにしました」

 練成会を終え、転職先の職場に出勤すると、あるとき先輩から、「若いのに言葉遣いがしっかりしていて、しつけをきちんとされていたんだね。お父さんから愛されているんだね」と言われた。

「父は昔から言葉遣いに厳しくて、幼い頃は注意されることが度々あったので、嫌われているのだと思っていたんです。でも私が将来困らないようにという思いで、しつけをしてくれていたことに気がつきました。その年の5月の私の誕生日には、父から『明るく美しい子に育って欲しいと願いを込めて名付けた』と、初めて教えてもらったんです。『本当は父に深く愛されていたんだ』と感じ、心に光が差し込んだような気持ちになりました」

hidokei127_rupo_3 そう話すMさんだが、その後も職場ではなかなか先輩と打ち解けることができず、分からないことがあっても相談ができずにいた。すると先輩から「分からないなら、分からないと言いなさい」と叱られた。

「でもその時は、前のように恐怖心や反発心が起きず、素直に話が聞けたんです。その後も先輩から度々注意を受けましたが、私のために指摘してくれているのだと感謝の思いを持つことができました。それに先輩は介護福祉士の資格をとった方がいいと助言してくれて、わざわざ参考書を買ってきて、勉強も見てくれたんです」

 転職して1年ほど経った頃には、年長者に対する不安や恐怖心が和らぎ、自然体で話せるようになった。

「先輩と打ち解けられるようになってからは不安を感じなくなり、普通に眠れるようになりました。それに、以前の昼食はゼリー飲料など手軽に取れるもので済ませていたんですが、今はおむすびや簡単なお弁当を作って食べるようになりました。睡眠をしっかりとって、栄養のある食事を心掛けるようになってからは、体調を崩すことがなくなりました」

心が体調を決める

 現在、生長の家山口教区青年会(*7)委員長としても活躍しているMさんは、新型コロナウイルスの収束を願いつつ、体調管理について、自らの経験を通して大切だと感じていることを教えてくれた。

「いつも明るい心でいることですね。人に対してマイナスの感情を持っていた時は、望んでもいないのに自分で体調を崩す原因を作ってしまっていました。心を明るい方に向けるようになってからは、自分で意識しなくても、良い選択や良い環境に導かれるようになって、体調もとても良くなりました。明るい心でいるためには、生長の家の教えにある『神に感謝しても父母に感謝し得ない者は神の心にかなわぬ』という言葉のとおり、まず両親に感謝すること。明るい心になるスタート地点は、そこにあると思います」

 Mさんは、山口教区の子どもたちに、両親への感謝の思いを持つことの大切さを伝えたいと微笑んだ。

*1 合宿して教えを学び、実践するつどい
*2 自然免疫であるリンパ球の一種、ウイルスに感染した細胞などを排除する
*3 幼児や小学児童を対象にした生長の家の学びの場
*4 過去に抱いた悪感情や悪想念を紙に書き、生長の家のお経『甘露の法雨』の読誦の中でその紙を焼却し、心を浄める行
*5 生長の家のお経の一つ。現在品切れ中
*6 生長の家の運動に賛同して献資をする会
*7 12歳から39歳までの生長の家の青年の組織