
橋本進之介さん
大阪市阿倍野区・21歳
取材●長谷部 匡彦(本誌)写真●永谷正樹
歩きながら、楽器の演奏やダンスをする吹奏楽活動の一つである「マーチング」。アメリカンフットボールのハーフタイムショーとして発展した歴史をもつ本場アメリカでは、演奏だけでなく、フォーメーションやダンスなどの視覚的要素を高めた、多彩な表現力を競うマーチングイベントが盛んだ。
なかでも、DCI(ドラムコーインターナショナル)は、13歳から22歳までの学生が参加できる、世界最大のマーチング・チャンピオンシップ。そのDCIで過去7回の優勝経験をもつ、シカゴを本拠地とする名門チーム「The Cavaliers(ザ・キャバリアーズ)」が、昨年(2019)11月に愛知県で開催したメンバーオーディションに、橋本進之介さんは、トランペットパートで参加し、合格した。
「でも、新型コロナウイルスの影響でDCIは1年間延期になり、来年の5月から8月の開催予定になってしまったんです。マーチングの最高峰で演奏出来ることを楽しみに、来年の4月に渡米するまでの間は、演奏技術の向上にむけて練習に励むつもりです」
中学、高校と吹奏楽部に在籍していた橋本さんは、高校時代にマーチングに取り組んだのがきっかけで、その魅力に惹かれるようになった。
「当時は、他の演奏者と比較してしまい、上手く演奏できない自分を責めてしまうこともありました。部活に行けなくなった時期もありましたが、仲間やコーチに励まされて、部活に戻ることができたんです。迷惑を掛けたコーチに恩返しをしたいという思いもあり、いつかDCIに挑戦してみたいと思っていました」
高校卒業後、大阪にある調理師専門学校に進学した後も、大阪にある一般のマーチング団体に所属し、そこで、過去にDCIで演奏したことがある先輩から経験談を聞く機会があった。
「アメリカ人はユーモアもあり、合理的に物事を考えて最新の技術をすぐに取り入れるところがあって、凄かったという話を聞いて、アメリカでマーチングをしたいという目標が明確になりました」
橋本さんは、小学1年生から両親に連れられて、生長の家の小学生練成会(*1)に参加し、「人間は神の子で、無限の力がある」という教えを学んだ。
「その教えが支えになっていますね。人は誰でも完全円満な存在であり、その本来の姿を現し出せる力が備わっているんです。理想と現実の差にくじけそうになることもありますが、努力を重ねることが大切だと思います」
昨年(2019)の3月に専門学校を卒業後、調理師免許も取得。しかし就職はせず、同校のアシスタントや、レストランでアルバイトをしながら、マーチング技術の向上をめざし、全国からマーチングのスペシャリストが集まる奈良学園大学マーチングバンド部に一般メンバーとして所属し、活動を続けていた。その努力が認められ、世界で活躍するチャンスを獲得できた。
「来年のDCI終了後は、10月からオーストラリアのワーキングホリデー(*2)を利用して英語と料理の勉強を続け、将来は、世界中の人と共に働き、周囲の人を幸せにする料理人をめざしたいと思っています。何かに挑戦する上で大切なのは、自分で自分の限界を決めず、自分の無限の可能性を信じることなんだと思います。今もし挑戦してみたいことがあるなら、思いきって実践してみてはいかがでしょうか? その気持ちが将来を幸福へ導くのかもしれません。Do my best, your turn next.」
*1 合宿して教えを学び、実践するつどい
*2 渡航先に1年間滞在し、仕事や勉強、観光ができる制度