世界を取り巻く問題に対して自分に何ができるかを考えるために、5歳の娘と中東・ヨーロッパへの旅に出た。ここまでドイツ、ベルギー、ヨルダン、トルコといった国々を周り、難民への取材や現地の人々との交流を重ねるなかで、多くの気づきや発見を得ることができた。

髙木あゆみ 学生時代から国際問題に関心を持ち、結婚・出産を経て「世界平和をめざすフォトグラファー」として、2014年「はちどりphoto」を立ち上げた。離婚を経験し、2019年6月〜9月、中東・欧州14カ国110日間の母娘旅を実施。

髙木あゆみ
学生時代から国際問題に関心を持ち、結婚・出産を経て「世界平和をめざすフォトグラファー」として、2014年「はちどりphoto」を立ち上げた。離婚を経験し、2019年6月〜9月、中東・欧州14カ国110日間の母娘旅を実施。

 ギリシャでは嬉しい再会が待っていた。

 ギリシャ人のおばちゃん、Pさんとは、ドイツのフランクフルトの公園で出会った。彼女は2歳の孫と元気な犬を連れていた。翻訳機のおかげで、ドイツ語・ギリシャ語を話す彼女とコミュニケーションがとれた。この近くに住んでいること、ギリシャのテッサロニキ出身で、マンションの部屋があること、バケーションに帰国することを話してくれた。私たちがテッサロニキに行く時期と重なっていたため、再会を約束していた。

上:テッサロニキのPさんご夫妻宅にて。市場で買った新鮮な素材で料理を作って振る舞ってくれた。娘の表情から、いかにのびのびしていたかを感じ取っていただけるだろうか(笑)/中:要塞から見た景色。テッサロニキの街並とエーゲ海が見える。恋人たちのデートスポットになっているようだった/下:市場そばのカフェ。雑多な雰囲気が心地いい

上:テッサロニキのPさんご夫妻宅にて。市場で買った新鮮な素材で料理を作って振る舞ってくれた。娘の表情から、いかにのびのびしていたかを感じ取っていただけるだろうか(笑)/中:要塞から見た景色。テッサロニキの街並とエーゲ海が見える。恋人たちのデートスポットになっているようだった/下:市場そばのカフェ。雑多な雰囲気が心地いい

 連絡ツールはSNS。彼女から届くギリシャ語のボイスメッセージを、翻訳機に聞かせて訳し、こちらからはギリシャ語に訳したものを文字で送信する。意思の疎通ができたかよく分からないままだったが、テッサロニキに到着してすぐに宿泊先のアパートメントまで来てくれた。母と同世代で、おおらかな感じが安心感を与えてくれた。

 Pさんは夫と犬と一緒に、車でドイツからギリシャに帰ってきていた。一緒に市場に買い物に行き、食事を作ってもらった。ワンちゃんがひたすらボールを追って走り回るので、娘は大喜びでボールを投げる。私が昼寝をさせてもらっている間、Pさんご夫妻と楽しく過ごしていたようだった。愛情を持って接してくれるのが伝わる。

 途中、翻訳機の電池が切れた。Wi-Fiもなぜか途切れたので、スマホの翻訳機能を使うことも叶わず、意思の疎通は全くできなくなった。それでも構わずギリシャ語で話しかけてくるし、言葉ではないコミュニケーションも楽しかった。あると便利なWi-Fiや翻訳機がなくても旅はできるし、「ない」ことで得られる体験も価値がある。