菅原正弘(すがわら・まさひろ)さん│57歳│北海道北見市 北見市郊外の自宅、ゼロ・エネルギー・ハウスの前で妻の純さんと。日差しを受ける南側に窓が多く、屋根には太陽光発電のパネルがある 取材/佐柄全一 写真/加藤正道

菅原正弘(すがわら・まさひろ)さん│57歳│北海道北見市
北見市郊外の自宅、ゼロ・エネルギー・ハウスの前で妻の純さんと。日差しを受ける南側に窓が多く、屋根には太陽光発電のパネルがある
取材/佐柄全一 写真/加藤正道

寒冷地でも威力を発揮するゼロ・エネルギー・ハウス

 北海道北見市にある菅原正弘さんの家を訪ねたのは、昨年(2019)12月下旬のこと。辺りに薄っすらと雪の積もった住宅街の一画に建つ菅原さん宅は、築5年の2階建て、外観はクリーム色のモルタル塗りで、見た目は普通の家と変わりない。実はこれが、時代を先取りしたゼロ・エネルギー・ハウスなのだ。

脱着式の太陽光発電のエネルギーモニター。発電状況が一目で分かるので、とても便利だという

脱着式の太陽光発電のエネルギーモニター。発電状況が一目で分かるので、とても便利だという

「この家は、パッシブ設計(*1)によるドイツ発祥の最新工法を用いたもので、床も壁も天井も高断熱、高気密にし、窓も高性能の複層窓にしているため、魔法瓶のようになっています。冬は日の当たる南から太陽熱を取り込み、夏は北側の高い窓から室内の熱気を逃すようになっています。熱交換換気システムも導入しているので、室内の空気を清浄に保ちながら、熱だけをリサイクルする仕組みで、これによって、吸気口から冷たい外気が入ることはありません」

 設置している太陽光発電は、6キロワットの発電容量を持ち、オール電化仕様のため、この太陽光発電で年間の消費電力を賄っている。 

 そうした設備を整えていることから、再生可能エネルギーの活用によって消費エネルギーを抑制した住宅に、経済産業省が補助金を交付するネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業の認可を受けている。

「冬は暖房費が少しかかりますが、夏は、朝方の冷えた空気を室内に取り込んで冷房を使わずに済むこともあって、年間の電力消費量と発電量の差し引きがゼロになります。この5年の間にそれが実証され、地球環境への負荷が少ないことが実感できただけでなく、住み心地も申し分ないので、大変満足しています」

先祖の導きで生まれた工務店の縁

 北見市に生まれた菅原さんは、生長の家信徒だった祖母の影響で、子どもの頃から生長の家の「人間・神の子」の教えを学んで育ち、自然に信仰の道に入った。

5年前の建築時、棟梁の説明に聞き入る菅原さん。床や壁には、厚みのある断熱材が入っている

5年前の建築時、棟梁の説明に聞き入る菅原さん。床や壁には、厚みのある断熱材が入っている

 中学校の教員だった父親に倣い、自らも教員を目指すようになり、昭和62年に大学を卒業後、しばらくして、北海道渡島(おしま)管内(函館市を含む支庁)の中学校に赴任。以来、今日まで32年にわたり、教育一筋の半生を歩んできた。

「子どもたちには、『人間は皆神の子で、無限の力を持っている』という思いで接しています。長い間、教師を務めてきて痛感するのは、子どもの教育には、私たち教師が『やれば必ずできる』という信念を持つことがとても大切だということです」

 熱心な信徒である菅原さんは、谷口雅宣・生長の家総裁の講習会や書籍を通して、環境保全の重要性を学んできた。そのため、平成27年に自宅を新築しようと思い立った時は、「それならエコ住宅を建てよう」と考えた。

 だが、インターネットで調べても、地元でエコ住宅を扱う工務店は見つからなかった。その上、「寒冷地でのエコ住宅は難しい」という新聞記事を目にしたこともあって、一旦は諦めかけた。

 しかし、そんなある日、思わぬところから道が開けた。自宅の郵便ポストに、ゼロ・エネルギー住宅のモデルハウスのチラシが入っていたのである。早速、家族で当該の工務店に見学に出かけた。

「担当の方が熱心に説明してくれたため、その話を聞いて、この会社は、ただ客に喜ばれたいだけではなく、環境保全に寄与する家を造って、社会に貢献したいという強い信念を持ってゼロ・エネルギー・ハウスを推進していると分かったんです。自然と人間の調和を目指している生長の家の考え方とも相通じるものを感じたので、これはご先祖様のお導きによる縁だと思い、施工をお願いしました」

“森の中のオフィス”の紹介ビデオを観て建設を決意

 それでも予算の都合で、ゼロ・エネルギー・ハウスにするかどうか決めかねた。だが、その年、菅原さん同様、祖母から教えを伝えられ、信仰するようになった妻の純さんが、白鳩会(*2)幹部研鑽会に参加して観た、生長の家国際本部“森の中のオフィス”(山梨県北杜市)の紹介ビデオが決め手となった。純さんはこう語る。

熱交換換気システムで、夏は清浄な外気を取り込んでいる

熱交換換気システムで、夏は清浄な外気を取り込んでいる

「自然と共生したライフスタイルを実現するために建設された“森の中のオフィス”を観て、私も資源の消費を抑えた生活を送りたいと切に思ったんです。夫も私の願いを聞き入れてくれ、費用がかさむものの、国からの補助金も後押しになって、オール電化のゼロ・エネルギー・ハウスを建てることにしました」

 北見市は、年間の日照率が全国の中でも高い上、平成2年から14年までソーラーカーレースが行われ、市内にある北見工業大学では、熱心に代替エネルギーの研究が行われるなど、太陽光発電への関心が高い地域であることも強い後押しになった。

設置費用は、約10年で回収できる

 そうして完成したのが、現在のゼロ・エネルギー・ハウスである。2年前から菅原さんが、北海道北部、オホーツク海に面した雄武町(おうむちょう)の小学校の校長として単身赴任し、今は週末に帰宅するため、普段は純さん、長女、長男の3人で暮らしている。

「太陽光発電の売電価格が安くなり、従来とは条件が少し異なってきましたが、それでも太陽光発電の設置費用が約10年で回収されるという見通しは変わっていません。それより何より、環境に負荷を与えず生活できるというのが、本当に嬉しいことですね」

 そう言って菅原さんは、満足そうに顔をほころばせた。

*1=建物のしつらえによって、太陽の光と熱、風などの自然の力を利用する設計技術
*2=生長の家の女性の組織