杉本光明(すぎもと・みつあき)さん│76歳│高知市 イーゼルに立てたキャンバスに向かって絵筆を走らせる杉本さん。「夢中になって描いていると、時間が経つのを忘れてしまいます」 取材/佐柄全一 写真/髙木あゆみ

杉本光明(すぎもと・みつあき)さん│76歳│高知市
イーゼルに立てたキャンバスに向かって絵筆を走らせる杉本さん。「夢中になって描いていると、時間が経つのを忘れてしまいます」
取材/佐柄全一 写真/髙木あゆみ

 高知城の近くにあり、山内一豊など土佐藩の歴代藩主を祀る山内神社。高知市内に住む杉本光明さんは、折ある毎にここを訪れ、自然環境保全区域に指定されている境内を散策するのを楽しみにしている。

山内神社の境内にある黒松を描いた作品

山内神社の境内にある黒松を描いた作品

「さまざまな樹木があって、それぞれに個性があり、見ているだけで楽しい気分になります。3年前から始めた水彩画の題材も、ここで見つけることが多いですね」

 黒松を描いた作品もその一つ。見上げるような角度から、枝を広げて葉を茂らせる黒松の姿が、ありありと表現されている。

「難しかったのは、黒松特有の木肌の表現で、絵の具を何度も重ね塗りし、くっきりとした感じを表現したつもりです。こうした重ね塗りは油絵に向いているやり方ですが、水彩でもできないことはないんです」

 杉本さんは平成29年、妻の督代(まさよ)さんに勧められ、絵画教室で水彩画を習い始めた。教室の展覧会に出品するだけでなく、昨年(2019)は、「高知県オールドパワー文化展」で入選するなど年々腕を上げている。

「絵の楽しさに目覚めたのは、地方講師(*1)として技能や芸術的感覚を生かした誌友会(*2)に出講するため、教室に通って絵手紙を始めたのがきっかけでした。もともと絵が好きだったこともあって、何気ない風景や物にも美しさがあることに気づくようになり、家内から、今習っている水彩画を勧められたときも、その感動がもっと深まるような気がして始めたんです」

現在、制作中の色鮮やかなアザミ

現在、制作中の色鮮やかなアザミ

 高知市内にあるガス会社を62歳で退職した後、不整脈を患い、心臓の手術を受けた。不安を訴えるようになった杉本さんの姿を見て、生長の家を信仰していた督代さんが、生長の家宇治別格本山(*3)の練成会(*4)に誘ってくれた。

「それまでは、関心がなかったんですが、不安に苛(さいな)まれていたので参加したんです。練成会のなかで、『人間は神の子で、完全円満な存在であり、病は心の迷いが仮に現れただけで、本来ない』と教えられ、不安が消えました」

 その後、すっかり体調が回復すると相愛会(*5)に入り、地方講師(*6)にもなって、人に教えを伝える活動にも励むようになった。さらに、平成26年から2年間にわたって、生長の家相愛会高知教区連合会長という要職も担った。

「美しいと感動したことを絵に描いているうちに、自然に人や物事の良いところを見ることができるようになりました。絵を描くことは、生長の家で教えられている『日時計主義』の生き方(*7)を実践することに他ならないと思っています。これからも感動を深めながら、描き続けていきたいですね」

*1=生長の家の教えを居住地で伝えるボランティアの講師
*2=生長の家の教えを学ぶ小集会
*3=京都府宇治市にある生長の家の施設
*4=合宿形式で生長の家の教えを学び、実践するつどい
*5=生長の家の男性の組織
*6=生長の家の教えを居住地で伝えるボランティアの講師
*7=日時計が太陽の輝く時間のみを記録するように、物事の明るい面を見て記憶し、語り、思い出す生き方のこと