
三好雅則(みよし まさのり)
生長の家本部講師。昭和24年生まれ。生長の家参議長。趣味は読書、絵画・音楽鑑賞、水彩画。
「生きているということは、新しくなるということです。その時その時対面するものは初めてのもので、昨日と同じものなんてひとつもないのです」──ふと手にした小倉遊亀画伯(*1)の著書の一節だが、毎日、ほぼ変わることのない日常生活の中で、ものをじっくり見ることを怠っていた私はハッとした。
プランターで胡瓜を育て始めた頃は、日々伸びゆく蔓や葉、開花と結実、実が膨らんでいく姿を新鮮な驚きをもって眺めたものだった。が、「慣れ」は、そうした出来事を“経験的知識”として概念化してしまい、刻々躍動する“いのちの営み”から目を逸らせてしまう。
そんなことを考えながら歩いているとき、道端のアカツメクサ(*2)に気がついた。顔を寄せて観察してみると、薄紅色の小さなぼんぼりに無数の小花が寄り集まり、小花は直径2ミリ、長さ2センチのラッパ状で、これが数十も折り重なっている。
その手の込んだ構造をじーっと見つめているうちに、造化(*3)の不思議を思い、何とも愛おしい気持ちになった。

イラストは筆者
そう言えば、小倉画伯は前出の文に続けてこう書いている。
「本当に心の底からそう思えますと、(中略)おのずから愛でる気持ちが湧いてくる。/朝、雨戸を開けて梅の花が目に入れば、『おはようさん』って声をかけたくなる」
コロナなど何かと気ぜわしい現代だからこそ、路傍にそっと息づいている草や花などに心を寄せてみよう。いのちの繋がりが感じられ、そこはかとない喜びが心を癒してくれる。
参考文献
●生長の家総裁・谷口雅宣著『太陽はいつも輝いている』(生長の家)
●小倉遊亀著『卓上の風景』(講談社)
*1=日本を代表する女流日本画家。1895~2000年
*2=別名レッドクローバー。明治時代に牧草として持ち込まれ野生化、炎症を鎮める薬効を持つ
*3=天地万物を創造し育てること。それをなす者。造物主