I.S.さん│97歳│群馬県 今、制作しているのは、来年の干支である寅。贈呈する人の笑顔を思い浮かべながら作っているという 取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘

I.S.さん│97歳│群馬県
今、制作しているのは、来年の干支である寅。贈呈する人の笑顔を思い浮かべながら作っているという
取材/佐柄全一 写真/堀 隆弘

 満開のアジサイに彩られ、新緑に挟まれるように佇む古い鐘楼(しょうろう)──。97歳のI.S.さんの手に成る切り絵は、縦41センチ、横32センチの小品ながら、濃淡のある和紙を用い、風情ある景色が表現されている。

赤城山の麓で出合った秋祭りの光景

赤城山の麓で出合った秋祭りの光景

「4年ほど前、長女と一緒に埼玉のお寺を訪ねたとき、とても雰囲気があるその光景を目にして感動し、写真に撮って切り絵に仕上げました。とても思い出深い作品です」

 笑顔で話すIさんが、切り絵に出合ったのは40年前。地元の文化祭で観て感動し、教室に通って習い始めた。その3年後には、「全国切り絵大会」で新人賞を受賞した。

 その技量の高さは多くの人が認めるところで、今年(2021)8月には、地元の『上毛新聞』に、「心に残る私の一枚」というタイトルで、Iさんの談話と共に、前述した古い鐘楼の作品が掲載された。

「ありがたいことに、97歳になった今も至って健康なので、暇さえあれば切り絵の制作に励んでいます。新聞に載ってから、多くの人にお褒めの言葉をいただき、ますます張り切っています」

 そんなIさんが生長の家の教えに触れたのは、昭和55年。当時31歳だった長男の糖尿病が悪化して人工透析になり、母親として苦悩のどん底にいた頃のことだった。近所の人から誘われ、藁にも縋る思いで誌友会(*1)に参加した。

古い鐘楼を描いた作品

古い鐘楼を描いた作品

「そこで、『どんな悪い姿が現れていても、現象は心の影であって本来ない。その奥にある円満完全な神の子が人間の本当の姿である』という話を聴いて感動しました。それから教えられるままに、神想観(*2)を実修し、聖経(*3)を誦げて、長男の実相(*4)を祈るようになったんです」

 長男は64歳で亡くなったが、生長の家で学んだ「生命は永遠生き通しである」という教えに支えられながら、悲しみを乗り越えた。長男の死を機に、毎朝、仏前で聖経を読誦して供養するようになったIさんは、4年経った今も、先祖供養と毎朝の聖経読誦を欠かさずに続けている。

「先祖供養は私の大切な日課で、供養を終えると、ご先祖様が護ってくださっているという思いとともに、長男や4年前に95歳で亡くなった主人への感謝の思いがふつふつと湧いてきます。感謝の気持ちを込め、いのちある限り、切り絵の制作にチャレンジしていきたいですね」

 そう語るIさんの顔は、97歳とは思えない意欲に満ちていた。

*1=生長の家の教えを学ぶ小集会
*2=生長の家独得の座禅的瞑想法
*3=生長の家のお経の総称
*4=神が創られたままの完全円満なすがた