三井眞知子(みつい・まちこ)さん│71歳│広島県竹原市 自宅のアトリエで絵を描く三井さん。後ろの壁や棚には、これまで描いた水彩画のほか、折り紙なども飾られている  取材・写真/永谷正樹

三井眞知子(みつい・まちこ)さん│71歳│広島県竹原市
自宅のアトリエで絵を描く三井さん。後ろの壁や棚には、これまで描いた水彩画のほか、折り紙なども飾られている 
取材・写真/永谷正樹

 江戸時代の古い町並みが残り、安芸(あき)の小京都と言われる広島県竹原市。その市内にある三井眞知子さん宅を訪ねると、壁や棚のあちこちに、花や果物、風景をモチーフにした自作の水彩画をはじめ、籠や花瓶の竹細工などが飾られていた。

「絵や竹細工は、60からの手習いとして始めたもので、特に夢中になっているのが絵です。今、描いているのは寒桜で、どうしたら淡い紅色の花びらを美しく表現できるのか、あれこれ考えながら描いていますが、こういうときが一番充実していますね」

椿を描いた作品。花びらや葉の色合いから生命力が伝わってくる

椿を描いた作品。花びらや葉の色合いから生命力が伝わってくる

 三井さんが水彩画を始めたのは、10年ほど前。知り合いのお嫁さんが開いた銀行ロビーでの展示会で水彩画の美しさに魅了され、水彩画教室に通うようになった。今も月1回のレッスンを受けている。

「絵を描く前には、対象となる花や果物に手で触れてみることにしています。そうすると、手から花や果物の生命力が伝わってきて、絵を描くエネルギーになるんです。この寒桜の絵も、手で触ったときの感触を思い出しながら、愛おしいという気持ちで描いています」

 手先が器用で、絵を始める前には竹細工にチャレンジし、市内にある工房で技術を学び、籠や花瓶などを編んだりした。

「のこぎりで竹を切ったり、ヤスリをかけたりして、自分の手で材料を作るところから始めなければならないので、竹細工は手間暇がかかりますが、それだけに出来たときの嬉しさは格別です。作品は、友人や知り合いに上げて喜んでもらいました」

 三井さんは昭和49年、24歳で結婚し、3人の子どもに恵まれた。しかし、小言(こごと)の絶えない夫の態度に悩むようになった。

「主人は私のやることなすことが気にいらないようで、いつも叱られてばかりいました。そんなとき、一つ年上の姉から『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、全40巻。日本教文社刊)をもらって読むと、そこに書かれていた『環境は心の影である』という言葉に惹きつけられ、生長の家をもっと勉強したいと思ったんです」  

工房に通って技術を学び、竹を使って編んだ作品の数々

工房に通って技術を学び、竹を使って編んだ作品の数々

 早速、生長の家広島県教化部(*1)に連絡し、近くの母親教室(*2)を紹介してもらって参加した。そこで教えを学ぶうちに、変わらなければならないのは、夫ではなく自分自身だったと気づいた。

「それからは、『日時計日記』(生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修、生長の家刊)に夫の良い所を探して書き出し、満面の笑みで褒め続けるうちに夫の小言は減り、いつしか円満な夫婦になることができたんです。『環境は心の影』という教えを実感した体験でした」

 3人の子どもたちが巣立った今、夫婦仲睦まじく日々を過ごしている。

「60歳から始めた絵や竹細工も、主人の理解があってこそできたことなので、主人には本当に感謝しています。これからも、谷口雅宣・生長の家総裁の『凡庸の唄』(日本教文社刊)に倣(なら)い、凡庸であることを喜び楽しみ、感謝して絵を描き続けていきたいですね」

 にこやかな笑顔が、幸せな人生を物語っているようだった。

*1=生長の家の布教・伝道の拠点
*2=生長の家の母親のための勉強会