伊東さん 81歳・岩手県 妹からもらった端切れに、毛布を張り合わせて作ったひざかけを手に 取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣

伊東さん
81歳・岩手県

妹からもらった端切れに、毛布を張り合わせて作ったひざかけを手に

取材/南野ゆうり 撮影/野澤 廣

 日当りのいい8畳間。伊東さんはカタカタとミシンの音を響かせながら、「今日は、手ぬぐいを帽子に作り替えているんですよ」と切り出した。

 両端を合わせた後、袋縫いし、下部の4分の1を折って、ぐるりとふた周りミシンがけをして、ゴム紐の通り道を作る。頭頂部分を対角線に縫い合わせ、ゴム紐を通せば完成。その間わずか15分。

 伊東さんが着物などをほどいて、衣服やバッグなどにリメイクするようになったのは数年前のこと。高校時代からの親友がくれた一反の染め物がきっかけだった。

「私たちは被服科の同級生。彼女は大病を患い、もう自分には作れないからと、私にその生地をくれたのです。私は粋で夏物らしい藍の生地をひと目で気に入って、早速部屋着用のパンツを3本作りました」

 白鳩会員(*)で生長の家の教えを長く信仰してきた伊東さんは、実際に作ってみることで、生長の家で教えられている手作りを楽しむことや、自分の手で作るもののかけがえのなさを実感した。

上:使わなくなった風呂敷や傘の生地を使って作った買い物用のマイバッグ/下:60年前、就職先の卸問屋の初売りで着たかすりの着物からスプリングコートができた。「思い出の一品だけに、思い入れもひとしおです」

上:使わなくなった風呂敷や傘の生地を使って作った買い物用のマイバッグ/下:60年前、就職先の卸問屋の初売りで着たかすりの着物からスプリングコートができた。「思い出の一品だけに、思い入れもひとしおです」

「使い切り、最後にはありがとうと言って手放す、それは物のいのちを大事にすることにもつながりますからね」と伊東さん。

 親友から病気を聞かされた時、伊東さんは自身の身じまいを考える時期だと感じ、残される家族を煩わせないようにしたいと思ったという。

 タンスをのぞくと、眠りっぱなしの着物類がたくさん詰まっている。それらを片っ端から衣類やバッグなどに作り替えていった。一方、「ほしい」と言う人には差し上げ、「作り方を知りたい」と言う人には仕上げまで手伝った。するとあちこちから「使って」と端切れが集まって来た。それらで作ったものを差し上げると、今度は自家製野菜をお礼に持ってきてくれ、リメイクを通して人の輪も広がった。

「着物やワンピースなどには、それぞれの思い出がしみ込んでいる気がするんです。元気でい続けさえすれば、この手でその生地に再び新たないのちを吹き込むことができますからね」

 と言って、60年前の思い出のかすりの着物をリメイクして作ったスプリングコートを、愛おしそうに手にした。

* 生長の家の女性の組織