時間に追われる日々の中で、手間のかかることは面倒だと感じることが多いもの。それでも、家族や友人や環境のためを思い、手間暇かけることは、便利さや効率だけを追わない、新たな価値に気づくきっかけになります。そこから、心の満ち足りた暮らしが展開していきます。

河端由子(かわばた・ゆうこ)さん(55歳)石川県野々市市 取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘

河端由子(かわばた・ゆうこ)さん(55歳)石川県野々市市
自分で仕立てた着物をリメイクしたジャンパースカートに、雑誌から手作りしたカゴを提げて買い物へ
取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘

趣味に地球への思いをプラスして

 石川県野々市(ののいち)市に住む河端由子さんを自宅に訪ねると、最初に見せてくれたのは、茶色の手提げバッグだった。一見、山ぶどうのつるを編んだものに見えるが、実は雑誌のページを裂き、ねじって編んで、着色したものという。小気味よい音を響かせながら、無心にページを引き裂く作業は、根気が要るように見えて、不思議と心が安らぐという。

「着色でガラリと印象が変わるものも、面白いですね。手間をかけて作るからこそ分かる楽しさで、買って済ませてしまうのは、もったいないと感じるようになりました。それに、手作りの品は愛着が湧いて大切にするから、長持ちします」

『新聞・雑誌をリサイクル  古紙クラフトのかご・小もの』(石上正志監修、日本ヴォーグ社刊)を参考にカゴを編む

『新聞・雑誌をリサイクル 古紙クラフトのかご・小もの』(石上正志監修、日本ヴォーグ社刊)を参考にカゴを編む

 小学生の頃から、お手玉を作ったりして針仕事が大好きだったという河端さんが取り出したのは、着物をリメイクしたジャンパースカート。夏祭りに浴衣を着るのが好きで、着付けを仕事にしようと思っていた20代の頃、着付けを習っていた先生から、着物の構造を知った方が上達すると勧められて初めて着物を仕立てた。しかし、その後、着る機会がなく、20年近くタンスに眠ったままになっていたのを、洋服にリメイクしたという。

 他にも、浴衣をリメイクしたエプロンや、調理用キャップ、その余り布で作ったコースター、布マスクなどを、次々と見せてくれた。そのほとんどが、自宅にあったものや、友人宅のタンスに眠っていた生地や着物をいただいて、リメイクしたもの。以前は手芸店で材料を買い求めていたが、大量生産・大量消費の生活から、持続可能な未来のために「買いすぎない・持ちすぎない」生活へと、ライフスタイルを転換する大切さを生長の家で学び、家にあるものでできないかと、まず意識が向くようになった。

「材料を買う前に、タンスに眠っていたりして、代用できるものがないか探してみる。もし買うなら、外国産ではなく国内産の自然素材を選ぶようにする。選択を少し変えるだけで、自分の趣味を楽しみながら、物のいのちが生かされて、地球も喜んでくれたら、こんな素敵なことはないですよね」

自然をないがしろにしない生き方をする

 河端さんが生長の家の教えに触れたのは、長男が生まれて1年ほどが経った30歳頃のこと。長男と同じ年頃の子どもをもつ近所のママ友から、母親教室(*)への参加を勧められた。

 現在は3人の男の子の母である河端さんは、度々いたずらをする子どもたちを叱ってばかりいたが、母親教室に参加する中で、子どもは「神の子」であり、「子どもに宿る神性を信じて、讃嘆の言葉の力で引き出す」生長の家の教育法を学んだ。

「男の子が物を作るのも、反対に壊してしまうのも、同じ創造性による働きで、構造を知るための勉強をしているのだと学びました。長男が時計を分解して壊してしまった時、中の構造を『すごいね!』と、一緒になって覗き込むと、怒るよりも、いい勉強をしたね、という気持ちの方が大きくなりました。おかげで、3人とものびのびと育ってくれました」

 また、生活の中で、人間が自然への感謝や畏敬の念を忘れてはいけないこと。人間が自然界を支配しようとして、自分たちの都合で改変していくと、多くの生物が絶滅し、自然界の与え合い、支え合いの仕組みが破壊されてしまうことを、生長の家で学んだ。

 そのとき河端さんの脳裏に、子どもの頃のある出来事がよみがえったという。河端さんの実家では梨の農園を営んでいたが、ある日、父親は農薬の散布を終えた後、梨の実を薬剤から保護していたビニール袋を外し、袋の口を縛っていた針金を、口にくわえて回収していた。すると、急に体調が悪くなり、病院に救急搬送された。農薬による中毒症状だった。

 その体験は、河端さんに強烈な印象を残した。化学肥料や農薬など、不自然な物を与えず、自然に逆らわないで作物を育てることが大切だと感じ、食への関心が高まっていった。

「人間は自然をないがしろにして生きていくことはできないと、実感しました。神様の創造した自然に反する農薬や化学肥料を使わないで、育てられた作物を口にしたい、と思うようになったんです」

喜ぶ顔が見たいからひと手間を楽しめる

今年初挑戦した味噌梅

今年初挑戦した味噌梅

 家族にも、できるだけ市販のものではなく、手作りのものを食べてほしいとの思いから、夫や子どもたちのためのおやつを毎日のように作り、冷蔵庫には手作りのものがいつも入っている。国産で、無農薬の材料を選ぶよう心がけ、冬場は甘酒を作り、仕事から帰宅した夫に「お疲れさま」と言って、笑顔で出すことにしている。

 発酵食品にも関心がある河端さんは、甘酒以外にも塩麹や醤油麹など、様々なものを仕込み、今年は「味噌梅」に挑戦した。これは、琺瑯(ほうろう)やガラスの器に入れた味噌に、完熟した梅を漬け、冷蔵庫で寝かせるだけ。1カ月くらいから食べることができ、賞味期限は1年ほどで、寝かせるほどに味が馴染む。フルーティーな完熟梅と味噌の塩気がマッチした味わいは、おにぎりの具や冷奴にピッタリだ。

 家族の健康のためだけでなく、子どもや夫が喜ぶ顔が見たいからと、ひと手間を惜しまない河端さんにとって、とても嬉しい出来事があった。

「何かの記念でケーキを買ったことがあったんですが、家には、私が作ったおはぎも残っていました。そうしたら、子どもたちがおはぎを食べて『やっぱりこっちの方がおいしい』と言ってくれたんです。あの時は本当に嬉しかったですね」

 また、母親教室などの集まりがある時にも、手作りのお菓子を持参している。周りから「時間がかかるから、手作りは大変ね」と言われることもあるそうだが、「好きなことって、大変だとは感じないんですよ。喜んでくれたら私は満足です」と微笑む。

電話帳から作ったカゴを白く着色。アンティークな雰囲気に

電話帳から作ったカゴを白く着色。アンティークな雰囲気に

 今年、河端さんは家庭菜園が好きな隣家の婦人のために、雑誌から野菜カゴを手作りして贈った。風が通るように、底の編み目を少し大きくし、贈る相手の雰囲気に合うように色合いも工夫して、丁寧に編んでいると、しみじみと喜びが湧き上がってきた。

 丁寧に暮らすことは、決して面倒なことではなく、「みんなが喜んでくれる」という思いがあるから、家事や仕事、趣味にひと手間をかけることに大きな喜びが感じられると、河端さんは話してくれた。

「家族や友人の喜ぶ顔を思い浮かべながら、そこに地球への思いをプラスして、使い捨てのものをやめたり、自然素材や国産の材料などに変えていく。そうすれば自然と、ひと手間を楽しみながら、地球環境に配慮した生活もできると思います」

 周りの人だけでなく、地球も喜んでいると思えるからこそ、河端さんは、楽しみながら生活できるのだろうと感じた。

* 母親のための生長の家の勉強会