
藤山佳江さん
48歳/兵庫県加古川市
取材/多田茂樹 写真提供/藤山佳江さん
夫婦ともに山口県出身の藤山佳江さんは、結婚と同時に夫の仕事先のある兵庫県加古川市に移り住んで既に21年になる。
「生長の家は、曾祖父の残してくれた古い『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊。全40巻)が家にあって若い頃から知ってはいたんですが、熱心にお話を聞くようになったのは、結婚して母親教室(*1)に通い始めてからです」
生長の家のプロジェクト型組織(PBS)には、「SNIオーガニック菜園部」、「SNIクラフト倶楽部」、「SNI自転車部」があり、藤山さんは3つともに参加している。
「畑の作物と向かい合っている時の充実した気持ち、手作りしている間の静かな時間、自転車で移動している間のCO2を出さないすがすがしさなど、どれを取っても深い喜びがあります」
藤山さんがPBSの中で特に熱心なのはクラフト倶楽部の活動だ。自然の素材を使ったクラフト作りは、気持ちが満たされ、本当に楽しいという。麻素材のたわしや蜜蝋(みつろう)ラップなどをはじめ、様々なものを作ってきた。中でも蜜蝋ラップ作りは、使い捨てのプラスチックラップの消費軽減に役立つので、作り方講習を開いたりして普及に努めてきた。
「生長の家の教えを広く伝えるためには、外に出て行かなければと思っていたので、インターネットのインスタグラムなどでつながりを作り、近所の工務店のスペースを借りてPBSのミニイベント(*2)で『リメーク広場』などを開いた結果、いろいろなご縁が広がっています」
手作りマスクのイベントを開き、マスクを寄付するプロジェクトにも参加

軽食喫茶店のテイクアウトを利用。環境に配慮して、持参した容器にサンドイッチを入れてもらった
新型コロナウイルス感染の拡大によって、不要不急の外出を控えることが求められるとともにマスクの入手が困難になったため、藤山さんも二月末頃から布マスクの手作りを始めた。
「蜜蝋ラップ作りのために用意していたオーガニックコットンを使って作ってみました。故郷の親にも送ると、とても喜んでくれたのが嬉しかったですね」
生地は豊富にあり、マスクの素材には困らなかったという。マスク作りのミニイベントも行うようになった。
「親御さんと一緒に参加してくれる小学生の子どもたちが、おぼつかない手つきながら一所懸命に作る姿を見ると、『偉い!』と讃嘆したくなります。ほどいて直しながらも最後まで仕上げた時の、とても満足そうな表情を見ると幸せな気持ちになりますね」
あるハンドメイドの会社が企画した、未使用の生地で手作りしたマスクを社会福祉協議会やNPO法人を通じて、必要とする人へ無償提供するプロジェクトにも参加した。常に外への広がりを意識して活動しているところが、藤山さんの素晴らしさである。
軽食喫茶のテイクアウトで売上に貢献

藤山さんの手作りマスク。ハンドメイド会社が企画したプロジェクトへ提供した
また、新型コロナウイルス感染拡大がさらに大きな問題になった頃、飲食店の売り上げが減少して困っていると伝えられ始めた。藤山さんが住む加古川市でも、飲食店の売り上げ確保に協力しようという呼びかけがあり、普段、飲食店をあまり利用しない藤山さんも3月頃から、軽食喫茶店のテイクアウト・サービスを利用するようになった。
ある日の夕方、食料品の買い物を済ませた帰り道、近所の軽食喫茶店の前を通りかかると、店内に明かりがなかった。入り口に近づいてみると、コロナの影響で15時までの営業となり、入店人数を制限していることや、テイクアウトの情報が張り出されていた。そこで翌日、夫と話して、昼食のサンドイッチをテイクアウトすることにした。

「手作りをしていると喜びが湧いてきます」
「しかし、普通にテイクアウトでサンドイッチを買うと、使い捨ての袋や容器などプラスチックのゴミがいっぱい出てしまうので、私は容器を持参して、それに入れてもらうようにしました。お店の人は何の問題もなくごく普通に対応してくれて、思い切って尋ねてみて良かったです」
さらに、藤山さんはオーガニック菜園部の活動にも力を入れている。
「4年ほど前から庭で野菜作りを始めました。トウモロコシなどを農薬や化学肥料を使わずに作っています」
新型コロナウイルスの感染が広がって以降は、家で過ごす時間が増え、さらに夫も時差勤務に変わったことで、生活リズムの変化を新鮮に感じているという。
「外出自粛期間は生活を見つめ直す機会となり、庭の野菜や木々の美しさを感じたり、食事をしたり、主人と過ごしたりするような何気ない日常にふとした幸せを感じ取れるようになりました。一方で、コロナで生活が困難になっている方が増えていると聞き、周囲の方のお役に立てるのは、本当に幸せなことだと思います」
藤山さんはそう話しながら、心の底から湧き上がるような笑顔を見せた。
*1 母親のための生長の家の勉強会
*2 「倫理的な生活」の意義を伝えるために、生長の家のプロジェクト型組織のメンバーが開催するイベント