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フェイスブックでつながった地元のアーティストが、P4Uをイメージして描いてくれた作品を手にする山﨑さん(撮影/堀 隆弘)

山﨑広実(やまさき・ひろみ)さん(53歳) 大阪市住吉区
取材/原口真吾(本誌)

戦渦の若者たちに心を痛めて

 
 生長の家が令和4年3月23日から全国で展開しているウクライナ支援イベント「P4U(ピーフォーユー)──ウクライナに平和を」に参加している山﨑広実さんは、ウクライナ支援のための市民団体「ウクライナ・日本の架け橋・Міст Україна-Японія(ミスト ウクライナ ヤポーニヤ)」関西本部の立ち上げにも携わり、メンバーの在日ウクライナ人らと共に議論を重ねて様々な支援を企画している。その熱意の背景には、一人息子を育てた母親としての思いがあった。

「ロシアのウクライナ侵攻によって、多くの若者が犠牲となっており、私も一人の母として胸が痛みました。家族で食卓を囲んでいるときも、ふと、こんな団らんの時間も奪われているんだと考えてしまうんです」

 谷口雅宣・生長の家総裁が、令和4年3月20日に「世界平和の祈り(新バージョン)*1」をフェイスブックに発表すると、『日時計日記』(生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修、生長の家刊)に祈りの言葉を書き写すようになった。その中に「すべてのウクライナの人々の心に/すべてのロシアの人々の心に(中略)/愛と平和と秩序と/中心帰一の真理を満たし給う」という一節があるように、悪を非難するのではなく、ただ世界平和の実現のみを心に描きながら、祈っている。

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夫の広文さんと(撮影/堀 隆弘)

 生長の家を祖母から伝えられた山﨑さんは、子どもの頃から青少年練成会*2に参加し、「人間は神の子で、無限の力が宿っている」と学び、「わがたましいの底の底なる神よ。無限の力よ、湧き出でよ」という言葉を、テストの前など緊張する場面で必ず唱えていた。

 32歳の時に夫の広文さんと結婚し、その2年後に一人息子の太輔さんを授かると、子どもに宿る神性を信じ、「あなたは本番に強い子なのよ」と、本来の力を発揮できるように励ました。英語の才能をぐんぐんと伸ばしていった太輔さんは現在、京都にある大学の英文科に通い、将来は国際的な仕事に就くのが夢という。

ウクライナに心を寄せる

 
 P4Uのウクライナ支援イベントは、「内外から寄付を募る」「ウクライナの国旗の色を使った物品を手作りし、友愛の情を表現する」「ウクライナの文化や民俗、産業、物産品などを学び、自分の経験や活動につなげる」という3つの柱からなる。

 山﨑さんは自宅に飾る花に、ウクライナの国旗の色と同じ青と黄色を取り入れたり、自転車で出かけた先でウクライナカラーを探して写真に収めたりして、P4Uのフェイスブックグループに投稿することから始めた。

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ウクライナカラーにした自転車に乗って、夫婦でポタリング(撮影/堀 隆弘)

 ウクライナの風土についても調べると、日本と同じように四季があり、桜の木も自生していることが分かって親しみを覚えた。

「家のあちこちにウクライナカラーのものを置いているから、心はいつもウクライナから離れず、世界平和を祈ることができています。玄関の外に夫が廃材から作ったベンチがあって、これもウクライナカラーに塗り直しました。すると、道行く人が声をかけてくれるようになり、そこから支援の呼びかけもしています」

 やがて、ウクライナ支援につながる思いと行動をつなぐ「P4Uリレー」が全国の生長の家で始まると、大阪教区では和歌山教区と連携し、大阪と和歌山を縦断する自転車リレーが5月21日に行われ、40人以上が走者として参加した。参加にあたり走者が募金をすると、同額を生長の家国際本部がマッチング(上乗せ寄付)して、WFP(国際連合世界食糧計画)に寄付*3されることになっていた。

「私も青色のスポーツサイクルとヘルメット、黄色のシャツに身を包んで参加しました。リレーの2日前に、母が『私にも協力させて』とお金を托してくれたんです。そこで周りの方にもイベントのことを話すと、合計4万1000円が集まり、マッチングと合わせて8万2000円の寄付となりました。リレー当日は『みんなの思いを背負って走っているんだ!』と思うとどこまでも走っていけそうで、バトンを渡した後も走者と併走して、そのまま50キロ走りました!」

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手づくりしたり、いただいたりしたウクライナカラーの小物をいつも携帯している(撮影/堀 隆弘)

団体の垣根を越えた支援

 
 令和4年4月に、自宅近くの商店街にウクライナと日本の国旗が掲げられているのが目に入り、郵便局で尋ねたところ、近くの専門学校でウクライナの避難民を受け入れることになり、歓迎のための準備だと教えてくれた。さっそく日本語学校を訪ねると、授業風景の見学もさせてもらえた。また、山﨑さんのP4Uの取り組みが、「ウクライナ・日本の架け橋」のメンバーの目に留まり、関西本部の立ち上げに誘われたのだという。

「日本語学校で避難民の学生を見たり、『架け橋』で在日ウクライナ人の方と交流する機会ができたりしたことで、私の中にあった“かわいそうな国の人たち”という先入観が崩れていきました。避難民の学生は皆、自分のスキルを上げるという意欲に満ちていたんです。彼らの姿勢から学ぶことも多く、支援は一方向ではなくて、お互いが成長していくものだと実感しました」

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商店街に飾られたウクライナと日本の国旗(撮影/堀 隆弘)

 7月31日には、「ウクライナ・日本の架け橋」関西本部の主催で第1回目となる避難民支援・交流イベントが行われ、山﨑さんも運営として忙しく動いた。そのため、避難民の方と直接交流することは叶わなかったものの、笑顔を見せる母親と、その笑顔に安心して表情を緩める子どもの姿に勇気づけられた。

「さまざまな支援活動を通して私の中に、ロシアの人たちも神の子として拝み、神が創られたままの姿が現れることを祈りながら、ウクライナの支援をしたいという思いが高まっていきました。そんな希望を胸に、同じ志を持つ方々と立ち上げたのが、ウクライナ支援ネットワーク『桜と向日葵(ひまわり)』です。これからも避難民の方々の心のケアを大切にして、少しでも笑顔になれるような支援活動をしていこうと、決意を新たに進んでいきます」

 山﨑さんは、今の思いをこう力強く話した。

*1 谷口雅宣編著、 谷口雅春著『人類同胞大調和六章経』(生長の家刊)所収
*2 合宿形式で教えを学び、実践するつどい
*3 現在の寄付先は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、日本ユニセフ(公益財団法人 日本ユニセフ協会)、特定非営利活動法人日本ウクライナ友好協会 KRAIANY