『白鳩』特集_161_写真1

この日参加したメンバーと。右から2人目が岡田美知子さん(撮影/堀 隆弘)

岡田美知子さん(69歳)
三重県鈴鹿市
取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘

自転車×ゴミ拾い

 
 自転車での散歩を楽しみながら、清掃活動を通して地域と地球に貢献する、そんな「クリーンサイクリング」のミニイベント*1を、岡田美知子さんは開催している。
*1 「倫理的な生活」の意義を伝えるために、生長の家のプロジェクト型組織のメンバーが開催するイベント

 4月下旬のこの日は、心地良い陽気と穏やかな風に恵まれ、生長の家鈴鹿道場には朝早くから、20〜40代の信徒たちが集まり、旅行や映画の話に花を咲かせていた。その傍らには、ほほ笑みながら耳を傾ける岡田さんの姿があった。

「鈴鹿道場は私設の道場で、元々は私の実家だったんです。花や野菜のプランターに水をあげたり、室内にグリーンを飾ったりと、ほとんど毎日来ています。『岡田さん居る?』なんて訪ねてくる方もいて、お茶をしながら世間話をすることも多いですね」

『白鳩』特集_161_写真2

道路脇の藪でゴミ拾い。投げ捨てられたゴミが多く散乱していた(撮影/堀 隆弘)

 何気ない会話から、イベントのアイデアが出て来ることもよくある。今回のクリーンサイクリングも、自宅周りの清掃活動を熱心に行っている信徒仲間がいて、その人の話題をきっかけに、「私たちもやってみようか」「自転車に乗って、みんなで行くのはどう?」といった調子で、あっという間に話がまとまった。

 他にも野菜苗の植え付けや、木製のCDラック製作、ミツロウラップ作りなど、昨年開催したミニイベントは全部で88回にもなり、クリーンサイクリングだけでも23回行われた。軽やかなフットワークが生まれるのは、岡田さんの道場に自然と人が集まるような雰囲気があるからだろう。

『白鳩』特集_161_写真3

地域に貢献した達成感に包まれ、晴れやかな表情を浮かべていた(撮影/堀 隆弘)

安全な走行で清掃活動を

 
 クリーンサイクリングに必要なアイテムは、軍手とゴミ袋、トング、それから水分補給用のマイボトル。走行時はヘルメットを必ず着用する、横に広がらず一列になって走るといったことも、安全な走行には欠かせない。

「私も細い道の出合い頭でヒヤリとした経験があるので、ルート選びに気をつけています。万一に備えて自転車保険に加入しておくことも大切ですね」

『白鳩』特集_161_写真4

安全第一に一列になって走る(撮影/堀 隆弘)

 道場を出発して10分ほど自転車を漕ぎ、自動車から充分距離をとれる道路脇に停めると、藪の中のゴミ拾いが始まった。

 この場所は見通しが悪く、ポイ捨てだけでなく、家電やタイヤなどの不法投棄もよくあるという。あっという間にゴミ袋はいっぱいになってしまうが、自転車のカゴに収まる程度で切り上げるように注意している。

「誰もゴミを捨てようと思わなくなるくらい、きれいな場所になればいいなと、願いをこめて清掃しています。活動後のさわやかさが、一番の原動力かもしれません。以前は人目が気になっていましたが、今では意識することなく、さっと道端のゴミを拾えるようになりました。自然に生かされている私たちですから、少しでも地球に与え返す生き方をしていきたいです」

『白鳩』特集_161_写真5

自転車を停めて、田んぼにやって来た鷺をスマホで撮影(撮影/堀 隆弘)

 清掃活動の後は、春の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、ゆったりと自転車を走らせて、地元のレストランでランチ会。途中、田植えを終えたばかりの水田に鷺が羽を休めており、岡田さんはふと自転車を停めた。

「冬の間、ここより暖かい伊勢の方に行っていた鷺が、この時期になると帰ってくるんです。今年もこの季節が来たんだなと懐かしさを感じ、『おかえりなさい』って声をかけたくなるような親しみを覚えます」

 心地良い達成感に包まれて道場に戻ると、岡田さんが淹れてくれたお茶を飲みながら、ひとしきり話した後、解散となった。ゴミの分別は後日に改めて行う。

『白鳩』特集_161_写真6

拾い集めたゴミを手に。分別までがクリーンサイクリング(撮影/堀 隆弘)

自転車で季節を愛でる

 
 岡田さんは小学校高学年の頃、母親に連れられて参加した誌友会*2で、生長の家の教えに触れた。
*2 教えを学ぶつどい

「誌友会で身の上話を聞き、世の中にはこんな大変な思いをしている人がいるんだと、子どもながらにびっくりしました。何か大切なことを学べるような気がして、それから私も誌友会に参加するようになったんです」

『白鳩』特集_161_写真7

ウクライナ国旗の色に染め、世界平和への願いが込められた鈴鹿道場(撮影/堀 隆弘)

 高校を卒業後、就職して事務の仕事に就いたが、本当にやりたかったことではないという気持ちがふつふつと湧き、悩むようになった。ある日、生長の家の本を開くと、「背水の陣を布いて退路を断ったとき、神の子としての無限力が湧き出て来る」といった内容の文章に目が留まった。

「そうだ、行動を起こすのは今しかないんだと、思い切って会社を辞め、デザイン専門学校に1年通いました。卒業後、地元のスーパーで包装紙をデザインする仕事が見つかり、道が開けたんです」

『白鳩』特集_161_写真8

 22歳で結婚して、2人の娘に恵まれ、家事に子育てに忙しくなってからも、生長の家の教えはいつもそばにあった。人間も自然の一部であることや、“宇宙船地球号”に乗り合わせている一員という意識が大切だと生長の家で学び、二酸化炭素を抑えた低炭素のライフスタイルを意識するようになり、65歳になってからは、電動アシスト自転車を日常の足として活用している。

「自転車で20分くらいの範囲に点々と森があって、小枝やススキを頂いて道場に飾るのが楽しみになりました。これからも季節を愛でながら、清掃活動を通して地球に与え返す生き方を実践していきたいと思います」

 親しみある岡田さんの笑顔に自然と人が集まり、活動の輪が広がっている。