中学を卒業後、働くことを決めた長男だったが、仕事が安定せず、厳しい言葉をかけて追い詰めてしまった。
そしてあるとき、就職口が決まったと嘘をついていた長男から、自殺をほのめかすメッセージが……。
どんな姿が現れていても本来の素晴らしさは変わらないと、長男を信じ切ることができたとき、道が開けていった。

『白鳩』No.160「体験手記」写真1

「今では息子がとても頼もしく思えます」(撮影/永谷正樹)

西山直子
50歳・大阪市

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 私は24歳のときに結婚し、2年後に長男、さらにその2年後には長女を授かりました。子宝を授かって幸せを実感しましたが、きちんと子育てができるのかという不安もありました。

 幼稚園に入園した長男は、他の園児の輪の中に入ることができなかったり、同じ所をぐるぐる走り回ったりするため、先生から「発達障害の疑いがある」と言われ、検査を勧められました。主人に相談すると、「検査なんて受けなくてよい」と言われましたが、私は幼い2人の子どもを抱え、どう育てていいのかと悩んでいたのです。

 そんなある日、幼稚園の前でご婦人から1冊の『白鳩』誌を手渡されました。持ち帰って読んでみると、そこには明るくて力強い言葉がたくさん書かれていました。なかでも、「人間は神の子であり、無限力がある」という言葉に惹かれました。というのは、私は何事に対しても自信がなく、劣等感をずっと抱いていたからです。

『白鳩』No.160「体験手記」写真3

 もっとこの教えを学びたいと思い、『白鳩』の裏表紙にスタンプされていた連絡先に電話をすると、自宅の近くで母親教室*1という勉強会が開かれていることを教えられ、参加することにしました。母親教室には、私と同世代の方が多く参加していました。
*1 母親のための生長の家の勉強会

 長男のことを講師に相談すると、「子どもは神の生命を宿して誕生した神の子で、神からの授かりものです。神の子は神様が育てて下さるから大丈夫よ!」と、力強い言葉でアドバイスしていただきました。おかげで私の心は明るくなり、清々しい気持ちで会場をあとにしました。

『白鳩』No.160「体験手記」写真4

 母親教室のことを主人に話すと、「生長の家」という名称は知らなかったものの、創始者である谷口雅春先生*2のことは聞いたことがあると話し、私が生長の家で学ぶことに賛成してくれたので、毎月の母親教室が楽しみになりました。そして、子どもの美点を褒めて伸ばすことや明るい言葉を使うことなど、母親教室で学んだことを子育てに取り入れました。とはいえ、生長の家で学んだこともすっかり忘れて叱ってしまい、自己嫌悪に陥ることもありました。
*2 生長の家創始者、昭和60年昇天

 長男は勉強が苦手で友達も少なかったので、小学校や中学校での生活は本当につらかったと思います。しかし、そんな素振りは一切見せず、ほとんど休むことなく通学していました。

長男がついた嘘

 
 長男は中学3年生となり、高校受験が近づいたある日、「卒業したら、進学しないで働く」と言い出しました。主人と私はせめて高校は出ておいた方がいいと長男に話し、担任の先生からも何度も説得してもらいました。しかし、長男は頑なに決意を変えようとしませんでした。小学校の6年間と中学校の3年間、頑張って登校していた長男のことを思い返すうちに、私は長男を自由にさせてあげたいと思うようになっていきました。

 ところが長男は中学卒業後、ハローワークに通いましたが、15歳という年齢のせいか就職先はなかなか決まりませんでした。それを見かねた主人が自分の営む会社で働かせることにしました。しかし、家と会社の往復で家族以外の人と積極的に関わろうとしないので、若いうちに外に出て働くことを長男に勧めました。長男は5年ほど働いた後、再びハローワークで仕事を探しました。

 その後しばらくして、マンション清掃の仕事が決まりました。週4日、1日4、5時間程度の仕事で、お給料は少なかったものの長男なりに頑張っていました。

『白鳩』No.160「体験手記」写真5

 しかし主人は、若くて体力もあるのに、朝は自分よりも遅く出勤し、早い時間に帰宅する長男に不満を持っていました。そして令和3年のある日、主人は長男に「22歳の誕生日までに家を出て、自立して生活できるくらいの仕事を見つけろ」と言いました。

 その頃、長女が国内のリゾート地で住み込みのアルバイトをしていて、生活費があまりかからない様子だったので、私は長男にも住み込みの仕事をやってみてはと言いました。長男はハローワークへ行ったり、ネットの求人情報を見たりして職探しを始めました。

 その年の5月、22歳の誕生日が間近に迫った頃、長男から「仕事が決まった」とLINEで連絡があり、職場は名古屋で、来月から働くということでした。ところが、6月になっても1人暮らしの準備をする様子がなく、長男は「派遣会社が用意している待機寮の空きがなくて1カ月延びた」と言いました。

『白鳩』No.160「体験手記」写真6

 長男は7月末に名古屋へ向かったので、私は一安心しました。ところが8月13日の夜、長男からのLINEのメッセージに目を疑いました。実は仕事が決まったというのは嘘で、当座の生活費として渡していたお金を使い果たして途方に暮れているというのです。しかも、自殺をほのめかすようなことも書いてありました。

 長男に対して自立してほしいという気持ちが強く、長男の焦りや不安を察してやれなかったことを心から悔やみました。主人は「自分が追い詰めてしまった」とパニックに陥ってしまい、私は「ご先祖様が護って下さるから絶対に大丈夫!」と主人にも自分にも言い聞かせました。

 LINEのメッセージが届いた直後から、長男の携帯電話は何度かけても繋がりませんでしたが、ようやく連絡が取れ、大阪市内のビジネスホテルにいることが分かり、迎えに行きました。長男は名古屋駅に着いてすぐに大阪行きの電車で戻り、市内のビジネスホテルを転々としていたというのです。

 長男が帰宅してからは、仕事のことは何も言わずそっとしておきました。そして、今後は親の考えを押し付けるのではなく、長男自身の考えを尊重しようと主人とも話し合いました。

すべてを神様にお任せする

 
 長男と今後のことについて話すことができたのは、2週間が経った頃でした。以前、長男と一緒に生長の家宇治別格本山*3の練成会*4に参加したことがあったので、道場に寝泊まりしながら教えを研鑽する研修生になって、自分自身を見つめ直すことを勧めました。
*3 京都府宇治市にある生長の家の施設。宝蔵神社や練成道場などがある
*4 合宿形式で教えを学び、実践するつどい

 長男はしばらく考えた末、研修生となり、宇治別格本山で研修生活を送りました。私は宇治で主人のご先祖様の永代供養を申し込み、自宅でも毎朝手を合わせて感謝の祈りを捧げました。そして、「長男にとって最も良い環境が与えられました。ありがとうございます」と祈りながら、今まで以上に先祖供養に励みました。

 さらに、『日々読誦三十章経』*5を毎日誦げているうち、長男に神の無限の知恵と愛と生命が満ち溢れ、無限力が湧き出てくるという思いが深まっていき、不安な心は次第に消え、すべて神様にお任せしようと思えるようになりました。
*5 生長の家のお経のひとつ。現在品切れ中

『白鳩』No.160「体験手記」写真2

愛用のサーフボードを手に(撮影/永谷正樹)

 1カ月間の研修生活が終わり、主人と私が迎えに行くと、長男の世話をして下さった講師は、「研修生活を通して自分自身の殻を破ることができたと思います」と話してくれました。長男も「生んでくれてありがとう」と、主人と私に言い、1カ月という短い期間でしたが、大きく成長したと感じました。

 また、研修生になることが決まってから宇治別格本山に行くまでの1カ月ほどの間、長男と一緒に行っていた聖経*6読誦を、研修生を終えて帰宅してからも続けました。
*6 生長の家のお経の総称

 その後も長男は仕事へ行くと言って家を出たものの、それは私たちを安心させるための嘘だったことが何度かありました。主人と私が大阪城公園に出かけたとき、長男とばったり会ったこともありました。しかし、どのような姿が現れていても、神の子である長男の実相*7は完全円満であり、就職してもしなくても、長男の素晴らしさはまったく変わらないという信念で、私も主人もそれを一切咎(とが)めず、長男を信じて見守ることにしました。すると、23歳の誕生日を迎える頃に、派遣社員ではありますが、滋賀県にある会社に就職が決まりました。
*7 神によって創られたままの完全円満なすがた

『白鳩』No.160「体験手記」写真7

 知り合いが誰もいない場所で、慣れない1人暮らしに奮闘する毎日のようですが、「会社の方は良い人ばかりで、特に副工場長が親切にしてくれる」と、長男は嬉しそうに話しています。

 主人はとても家族思いで、子どもたちが幼い頃からたくさんの思い出を作ってあげたいと、春と秋はキャンプに、夏は海水浴、冬は雪山でスノーボードにと、毎年家族で出かけていました。今は長女も家を出ているので、主人と2人の生活になり、最近主人とともにサーフィンを始めました。まだまだ初心者の域を出ませんが、海に抱かれながら波と戯れるのはとても素敵な体験で、主人よりも私の方が夢中になっています。

「人間は神の子である」と説く生長の家の教えのおかげで、神の子としての長男の神性を拝むことができるようになりました。これからもこの教えを学び続け、幸せな人生を築いていきたいと思います。

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