誰でも、学校の勉強や仕事がうまくいくと、うれしいものです。また、友達や同僚との人間関係が良いと、毎日が楽しいでしょう。逆に、これらがうまくいかなければ悩み、投げやりになることもあり得ます。
けれど、本心では「なんとか良くなりたい」と思っているものです。それは、誰にでも“向上心”があるからそう思うのです。
楽しく日々を過ごし、自分を向上させる方法の一つは、自然と触れ合うことです。自然豊かな場所で過ごすと、ストレス解消に効果があることはよく知られています。が、「日常生活」と「自然に触れること」がつながらない人もいるでしょう。
次に、それに関する私の体験を紹介します。
自分の「引き出し」が増えていく
私は若い頃、東京で数年間暮らしました。当時は仕事が忙しく、関心はあっても自然を見る余裕はないと思っていました。
しかし休日のある日、近所の公園でお腹に黒い縦線が入った鳥を見ました。調べてみると、その鳥はシジュウカラだと分かりました。
ハト、カラス、スズメ以外の鳥を知らなかった私には新鮮で楽しく、公園や神社で、他にヒヨドリ、メジロ、オナガ、キツツキなども見つけました。見ていると「皆、がんばって生きているのだな」と感じました。
それから、出勤時や休憩時間に鳥を見て元気をもらい、前向きに仕事に取り組むことができました。この趣味は今でも続いていて、鳥が好きな友人もできました。
このように、都会でも少し意識すれば、さまざまな自然が生活圏内で見つかります。お勧めは、漠然と「自然」を見るのではなく、街路樹、植え込みの花、ふと出会う虫、空、雲、雨、風、夜空や星座など、関心を絞ること。興味が深まっていけば知識、スキル、表現力など、人としての「引き出し」が増えていくかもしれません。
しかも、この「引き出し」からは、多忙でも悩みがあっても、癒しや心の余裕、新たな出会いが与えられることもあります。それによって得られるポジティブな気持ちは、本心からの願いである「向上すること」につながるでしょう。
自然のありがたさ
人間は自然と触れ合い、自然から学んで現在の社会を作ってきました。例えば、飛行機は鳥の飛翔、船は魚の泳ぐ姿を参考に作られ、ハスの葉の水を弾く特性を応用して、撥水性のあるウェアが生まれました。
このような例はたくさんあり、自然の智慧から学んだことによって、今、快適な暮らしが実現していることが分かります。
また、多くの人は、深呼吸する時や食事の時、温泉に浸かる時など、あらゆる時に自然に支えられていることを知っています。しかし、知識としてそれらを知っていても、普段、どれだけ自然に目を向けることができているでしょうか。
自然との接点が少なくなってしまうと、心身に不調を来すことはよく知られています。また、個人だけではなく、現代の地球温暖化や気候変動などの深刻な問題の背後にも、人々の自然への無関心があります。
心身が不調な時や、温暖化などについて見聞きした時には、意識して自分の身の回り、生活圏内の小さな自然に目を向けてみてはいかがでしょう。
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岡田慎太郎(おかだ・しんたろう)
生長の家本部講師
名古屋市出身。機関誌『生長の家』記者。2001年、生長の家宇治別格本山で教えに触れる。趣味は自転車、温泉巡り、俳句、登山、写真。