自分を「神の子」として認め、人に対して「尊敬と感謝」の念を持とう

 
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 家庭に始まり、学校、職場と人間関係の悩みは尽きないものです。特に春は進学や就職などで、新しい環境に置かれる場合があるため、そうした悩みを抱える方も多いことでしょう。

 最近は、SNSの普及で人と関わる機会がさらに増えました。自分の投稿に「いいね!」などの嬉しい反応がもらえるようになった一方で、厳しい意見が寄せられることもあります。

 しかし、人から気に入られようとして、誰かの意見に合わせてばかりだと疲れてしまい、最後には自分がどうしたいのかも分からなくなってしまいます。私自身、10代の頃は「相手から嫌われたくない」と思うあまり人が怖くなり、外にすら出られなくなった過去があります。当時はそんな自分のことを否定し、嫌いにもなりました。

 幸福な人生を送るためには、円満な人間関係がとても重要です。では、他人に振り回されず、 相手と良い関係を築くために大切なこととはいったい何でしょうか。

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人間の本当の価値を知る

 
 それは自分と相手のどちらにも、「尊敬と感謝」の念を持つことだと私は思っています。そのためには、自分を含めた人間の本当の価値とは何なのかを知る必要があります。

 私たちは普段、自分の力で生きているように思い、幸福になろうと頑張っています。そして、失敗や挫折をした時は自分を責め、価値のない存在だと思うこともあるでしょう。しかし本当は、人間は「神の子」であり、そのままで尊い存在なのです。

 生長の家では、一人ひとりに宿る尊い生命を「神」と呼んでいます。人間は神様から生命を与えられ、「生かされている」存在であり、今ここに「生命=神様」が顕われているのです。

 ですから、私たちは何かができるから尊いのではなく、ただただ神の子として生かされていることに無限の価値があります。そのままで無条件に尊い存在なのです。

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「神の子」である自分自身を拝む

 
 だから私たちは、神社で神様を拝むように、自分自身のことを「神の子」であると認め、味わい、拝んでいいのです。そして、道を歩くにしても、ご飯を食べるにしても、「神様が歩いておられる、神様が召し上がっておられる」と、常に自分が神の子であることを自覚するようにしましょう。そうすると次第に、神様の生命の顕われとしての自分自身が尊く、ありがたく感じられるようになります。

 そのようにして、自分を拝み、自分が生かされていることのありがたさを味わえば味わうほど、そんな自分を生んでくれた両親に感謝の思いが湧いてきます。さらには周囲の人々も尊く、ありがたい存在に観えてきます。すると、自然と相手に笑顔も向けたくなり、もし困っている人がいれば、深切にしたくなってくるのです。

 両親や家族、そして周囲の人に対して尊敬と感謝の念を深めていると、「他人は自分の心の鏡」ですから、他人も自分に尊敬や感謝の念を持ってくれるようになります。ついには人だけでなく、生きとし生けるものすべてが尊く、ありがたいと観じられる心が芽生えてくることでしょう。

 皆様がこれからますます幸福であることをお祈り申し上げます。

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千羽真平(ちば・しんぺい)
生長の家本部講師補
生長の家宇治別格本山勤務。約7年の不登校と受験失敗を経て、練成会で救われる。万年筆で静かに『日時計日記』をつける贅沢な時間が好き。


 

「神においてすべては一体」と祈り、調和の心を大切に生きる

 

総合病院の看護師や、地方自治体の保健師をしていた田上志保さんは、職場の人間関係でつまずき、「死にたい」とさえ思うほど悩んだことがあった。その後、現在の職場に移ってからは、「すべての人々は神において一体であり、すでにお互い調和しています」と、毎朝の瞑想の中で祈ってから一日を始めている。

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(写真/遠藤昭彦)

田上志保(たがみ・しほ)さん
山梨県北杜市・39歳・団体職員
取材●長谷部匡彦(本誌)

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 現在、生長の家国際本部“森の中のオフィス”の総務部で働く田上志保さんは、職場の人々への感謝の思いを話しながら、優しい笑顔になる。

「総務部の仕事は多岐にわたりますが、信頼して相談できる上司や同僚に囲まれているので安心感があります。ご縁を頂いて一緒に働いてくださる皆さんは、自分にとってかけがえのない存在であり、ただ感謝の思いしかありません」

いじめで人間不信に陥る

 
田上さんは、生長の家の信徒である両親のもとで育ち、幼い頃に、生長の家富士河口湖練成道場*1で行われた練成会*2に参加して、「人間は皆、神の子で素晴らしい」という講話を聴いた。
*1 山梨県南都留郡富士河口湖町にある生長の家の施設
*2 合宿して教えを学び、実践するつどい

 その後、小学2年生の時に父親の仕事の都合で、千葉県から福岡県に引っ越し、仲のよい友達もできた。だが、5年生の時に、クラスメートからいじめを受けるようになった。

「標準語と福岡の方言とのイントネーションの違いから、からかわれるようになったんです。それが次第にエスカレートしていき、女子の輪にも入れてもらえず、男子からは心ない言葉を投げかけられるようになりました」

 両親には心配をかけたくなくて、いじめられていることを話せず、一人で悩み続けたが、当時、読んでいた生長の家の月刊誌『理想世界ジュニア版』*3の「Q&A」のコーナーに相談したことがあった。
*3 以前発行されていた、生長の家の中高生向け月刊誌

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職場である生長の家国際本部“森の中のオフィス”の総合案内で(写真/遠藤昭彦)

「回答してくれた講師は、私の辛い気持ちを受け止めてくれたうえで、『相手を許しなさい』と返事をくれました。そして、手紙と一緒に送られてきた生長の家の本に紹介されていた、和解の神想観*4を実修するようになりました。いじめで心が沈んだ時は、練成会で教わった『わたしは神の子、これから毎日、あらゆる点で一層よくなります』と、よく唱えていましたね。この言葉を知らなかったら、厭世的(えんせいてき)でひねくれた考えをするようになっていたと思います」
*4 生長の家独得の座禅的瞑想法

 卒業するまで同級生から受け入れられることはなかったが、中学校に進学すると、自分にいじめをしてきた生徒から謝罪された。

「和解の神想観をするなかで、私も相手を受け入れられないという思いを抱えていたことに気がついて反省しました。私の心の波長が変わったことで、同級生の態度が軟化したのかもしれません」

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「自分の良心に耳を傾けて、諦めずに頑張っていたら、予想もしないところから解決策が見つかることがあります」(写真/遠藤昭彦)

仕事が上手くいかない

 
 高校を卒業すると、看護師を目指して大学の保健学科に進学し、卒業の年の看護師の国家試験に合格後、大学病院で働き始めた。

 その後、27歳の時に、仲の良かった同期の一人に誘われ、京都府の病院に転職した。

「正確さが求められる看護師の厳しさを実感していたなかで、新しい病院では救急科に配属されました。でも、そこは一刻を争う医療現場で、取り返しのつかない事故を起こしてしまわないか不安になり、穏やかに対応できる業務の方が向いていると考えるようになったんです。そこで3年間働いた後、神奈川県にある病院に転職しました」

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 その病院では、脳卒中によって自力で食事ができなくなった患者さんに対し、嚥下(飲み込み)のリハビリテーションを行う認定士の資格取得を目指した。

「患者さんのお役に立ちたいという願いがあったんですが、自分の有能さをアピールしたいと、自己判断でリハビリを進めてしまうこともあったのだと思います。患者さんに負荷をかけることを心配した同僚から、『安心して一緒に仕事ができない』と言われ、上司からも叱責されるようになりました」

 次第に仕事の分担が減らされるようになり、上司からは「試験に合格しても辞退した方がいい」とまで言われてしまった。

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穏やかな心で愛を感じる

 
 気持ちが沈み、解決の糸口を求めたとき、小学生の時に参加した練成会を思い出し、29歳の時に生長の家富士河口湖練成道場の練成会に参加した。

「『人間は神の子である』という講話を改めて聴き、『私は神様に生かしていただいている素晴らしい存在なんだ』と思えるようになったんです。心に喜びが溢(あふ)れてきて、生命力が湧き上がってくるのを感じました」

 浄心行*5では、これまでの人間関係の悩みを書き出して焼却した。その後、講師の先導のもと、合掌して「お父さん、ありがとうございます。お母さん、ありがとうございます」と唱えていると、瞼の裏に、大学進学で引っ越しを手伝ってくれた時の両親の姿が浮かび、深く愛されていたことを思い出した。
*5 過去に抱いた悪感情や悪想念を紙に書き、生長の家のお経『甘露の法雨』の読誦の中でその紙を焼却し、心を浄める行

「穏やかな気持ちに包まれて職場に戻ることができ、患者さんの心に寄り添えるようになったと思います。脳卒中で言葉を失った患者さんが、感謝の思いを表情や仕草、温かい眼差しで返してくれることがあり、お役に立てていると感じられたのが幸せでした」

 その後、退院した患者の生活を支えたいという思いから、病気の予防やアドバイスをする保健師として、2017年4月から長野県の村役場で働き始めた。

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周囲の人は何かを教えてくれる存在

 
 それまでの人間関係では悩むことが多かったため、そんな自分を改めようと、毎月、生長の家長野県教化部*6の練成会に参加し、生長の家の教えを真剣に学ぶようになった。しかし、その一方で、職場では先輩の保健師と意見の食い違いからトラブルになる出来事があった。
*6 生長の家の布教・伝道の拠点

「心のどこかで、病院で働いてきたことを自負していて、医療現場の経験がない先輩を軽んじていたんだと思います。あるとき先輩との仲が修復できないまでになってしまい、上司から退職を求められてしまったんです。そのときは、ようやく落ち着いてできる仕事を見つけたというのに、これからどうやって生きていけばいいのか分からなくなりました」

 その日の帰り道、「木曽川に身を投げて死んでしまいたい」という思いがよぎり、翌朝、教化部に駆け込んで、生長の家の講師にすべてを打ち明けた。

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「講師は、『神様が創造(つく)られたままの本当の世界は完全円満で、あなたはすでに救われているのよ』と話してくれたんです。実際は宙ぶらりんの状況だったのに、地に足がついた感覚をおぼえて、安心感を得ることができました」

 落ち着きを取り戻して、電話で両親に状況を伝えたところ、その翌日に福岡から弟と一緒に会いにきてくれた。

 両親と共に教化部へ相談に乗ってくれたお礼に行くと、生長の家国際本部で職員を募集していることを知らされ、同年8月に就職した。

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「休日は、家庭菜園やサイクリングを楽しんでいます」(写真/遠藤昭彦)

 田上さんは、退職を迫られた時のことを振り返り、「どうして私が、こんな不当な扱いを受けなければいけないの?」と初めは考えていたと話す。だが、生長の家の教えを学ぶなかで、周囲との調和に欠けた心の持ち方では、人づきあいが上手くいかないことを、保健師の先輩が身をもって教えてくれていたことに気づいたという。

「いまは、朝晩の神想観のなかで、『すべての人々は神において一体であり、すでにお互い調和しています。ありがとうございます』と念じるようになりました。人間関係で疑問を持つことがあっても、すぐに素晴らしい神の子同士だから大丈夫だと思えるようになり、明るい心でいられます」

 調和の心で相手を敬い、「人間は皆、神の子である」と拝むことが人間関係では大切だと、田上さんは満面の笑顔で話してくれた。