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渡ってくる海風を胸いっぱいに吸い、「黒潮の海が大好き!」との思いがますます深まる

島村美絵さん(61歳)
高知県南国市
取材/多田茂樹 撮影/堀 隆弘

海の生き物たちの命を思いやる


 雄大な黒潮の流れの恵みを受ける南国高知は、5月を過ぎれば夏を思わせる日が増える。

 5月半ばの日曜日、生長の家高知教区の白鳩(*1)会員10名ほどが南国市の浜辺に集まり、海岸清掃を行った。毎月恒例の行事だけに、大きなゴミ袋とトングを全員が持参するなど、手慣れた様子がうかがえる。

 海岸に沿って延びる高いコンクリート堤防の石段を昇ると、目の前には広い浜辺が広がっている。その向こうには太平洋の水平線が、かすかに弧を描きながら見渡す限り続き、その景色に心が洗われる。

 参加者たちは堤防から降り、いつものように海岸の清掃作業を開始した。

「この浜辺は、これまで7カ月間清掃してきた海岸の隣の場所なんです。これまで清掃してきたところはかなりきれいになったので、今回から新しい場所を清掃しようというわけです」

 島村美絵さんがにこやかに語る。一見、美しい海岸も、改めてよく見ると煙草の吸い殻やコンビニ弁当の殻、ペットボトル、空き缶、レジ袋などのゴミがあちらこちらに散乱している。

 参加者たちは、散り散りになって足許のゴミを拾い始め、持参した袋は見る間に拾ったゴミで膨れ上がる。

 清掃作業を手伝いながら気づいたのは、皆が弁当殻やペットボトルなどの目立つゴミだけでなく、浜辺に打ち寄せられた流木の隙間に潜むビニール袋の小片や、吸い殻などの小さなゴミも丹念に回収していることだ。

 島村さんに尋ねると、「これは私たちの環境に関する学習の中から学んだことです」と言う。

「大きなゴミを拾えばきれいになったような気がするのは確かですが、それだけでは根本的な解決にならないんですね。魚やウミガメ、海辺の鳥などが誤って食べてしまう細かいプラスチックゴミも、丹念に拾わなければならないと生長の家で学んだんです。そのことを知って、いろいろな海の生物たちの命を感じながら作業すると、『あなたたちを助けてあげるからね』という思いが強まって、自然への感謝も深まっていきます」

 参加者たちは「見た目のきれいさ」だけでなく、放っておけばマイクロプラスチックとして海中に漂うことになる小さなプラスチックゴミも、減らそうという意識をもっているのだ。

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袋は空き缶やペットボトルで見る間に膨れていく(左)/流木の隙間に紛れ込んだ小さなプラごみも、見逃さず回収する(右)


病が癒される


 島村さんが生長の家の教えを学ぶようになったのは、子宮筋腫がきっかけだった。小学校教員となり特別支援学級を担任して、大学の先輩だった夫と結婚したが、33歳の時に子宮筋腫に罹っていることが判った。

 一時は絶望的な気持ちになったが、生長の家を信仰する母親の勧めで、長崎県にある生長の家総本山(*2)の団体参拝練成会(*3)(団参)に参加したことが運命を変えた。

「団参では、早朝の神想観(*4)に入る前、先導する講師の招神歌(かみよびうた)(*5)を聞いただけで、ゾクゾクッと震えて鳥肌が立つほど感動したのを覚えています」

 神の子である人間の実相(*6)は完全円満であり、病は迷いの心が現れている仮の姿であると学び、夫と調和していなかったことに気づかされて深く反省した。参加者たちの人生の様々な困難が解決した体験談を聞くほどに、「この教えは本物だ」という思いが深まった。

「病本来なし」の信仰を深め、夫婦調和を心がけるようになると、子宮筋腫の症状はなくなっていき、今では経過観察という、ほとんど問題のない状態になった。

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ほんの1時間あまりで、持ち寄ったゴミ袋が一杯に。この清掃作業は毎月行っていくという


海の恵みに生かされて


 高知出身の島村さんだが、海から少し離れた農村で生まれ育ったので、子どもの頃はそれほど強く海のありがたさを意識することはなかったという。ところが、地球温暖化防止や生物多様性を守ることは喫緊の課題であり、自然の恵みに感謝することの大切さを生長の家で学ぶようになり、気づかぬうちに海の恵みを受けてきたことを実感するようになった。

「子どもの頃は海水浴に連れて行ってもらって、海の楽しさを体全体で感じていたし、高知名物の鰹など、おいしい海産物もいただいてきました。それに、ちょっと足を延ばせば美しい海岸が広がっていて、気持ちのいい海風に吹かれることができるというのが、こんなにも素晴らしく幸せなことだというのが、今になってしみじみと感じられるようになってきたんです」

 谷口清超(*7)・前生長の家総裁は生前、自然の大切さや地球温暖化防止の必要性について説かれ、自ら率先して空き缶やゴミ拾いをされていたことにも改めて感動していると島村さんは言う。自然の中に「真・善・美」を見出す心を、谷口雅宣・生長の家総裁の講話や著述の中にも強く感じていて、それが地元の海岸をきれいにするという白鳩会の活動の中に息づいている。

「私たち高知の人間はこの黒潮の海が大好きで、開放的な県民性も、雄大な海と切り離して考えることはできないと思います。この大切な海の恵みが末永く続くためにも、私たちの清掃作業は意味があると感じています」

 これからも白鳩会の仲間たちと海の自然を守る清掃作業を続け、海に棲む多くの生物たちへの思いを深めていきたいと島村さんは念願している。

*1 生長の家の女性の組織
*2 長崎県西海市にある生長の家の施設。龍宮住吉本宮や練成道場などがある
*3 合宿形式で教えを学び、実践するつどい
*4 生長の家独得の座禅的瞑想法
*5 生長の家独得の座禅的瞑想法である神想観実修の時に唱える神をよぶ歌
*6 神によって創られたままの完全円満なすがた
*7 平成20年昇天