信仰には道を切り開き、周囲の人の仏心を引き出す力がある

 

信仰によって立ち直る

 
 特集ルポの石井覚さんのように、信仰には人の運命を変える大きな力があります。実は私も信仰で立ち直った1人です。

 私は小学校高学年から不登校(計4年間)がはじまり、高校時代には留年もしました。何とか地元の大学に入ったものの、心身共に不安定で、「このままでは就職も結婚も出来ない」と将来に希望を持てませんでした。

 そんな時、1冊の生長の家の『白鳩』誌に出合い、教えを学び行ずることで心身の不安定は解消し、希望ある人生が開けてきたのです。

 その後、就職も結婚も出来て、更に生長の家の本部講師という大きな使命も頂きました。教えがなかったら、自分の人生はどうなっていたか見当もつきません。

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 併せて数兆円規模の売上高を誇る、京セラと第二電電(現・KDDI)を1代で築き上げ、JAL(日本航空)を再建した稲盛和夫氏(昨年(2022)90歳で死去)もまた、信じる心の力によって道を切り開いた1人です。

 稲盛氏は若い頃、受験に失敗し挫折を味わいます。国民学校高等科に入学した翌年には肺浸潤(当時の死病である肺結核の手前の状態)にかかり、病床に伏してしまいました。そんな時、生長の家の『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊)を読み、病気が癒えるばかりでなく、「人間には天分があり、それを世の為に使う。私利私欲で出し惜しみしない」といった生長の家の教えを経営に生かすのです。

 同氏が78歳の頃、経営破綻したJALの再建を打診された時、周囲からは「もし失敗したら晩節を汚す」と大反対にあったといいます。

 ところが、「航空会社がANA1社の独占になると、日本の経済に打撃を与える。JALの再生は必須だ」と、自分の損得は考えずに再建を引き受け、わずか2年で同社をV時回復させました。稲盛氏のこの経営理念は多くの人・企業に多大な影響を与えています。

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一人の仏心が周囲に広がっていく

 
 また、1人の信仰と行動は、周囲の人々の道徳心にも良い影響を与えるという面もあります。

 今から20年ほど前、大下貞雄・生長の家中華民国教化総長(当時)は、自宅から職場までの道で、ゴミ拾いを始めました。はじめは、周囲の人たちから冷ややかな視線を浴びていましたが、続けている内に協力者が現れ始め、それが地域社会に広まっていくなかで話題となり、ついには中華民国内政部から表彰もされました。

 このように、1人の仏心(ぶっしん)が周りの人々の仏心を引き出すということをさらに広げて考えると、生長の家が取り組んでいる地球環境問題解決のための鍵も、そこにはあると思われます。

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 谷口雅宣・生長の家総裁は『今こそ自然から学ぼう』(生長の家刊)で、次のようにお示し下さっています。

科学技術の進歩は必ず悪い結果を生むのではない。そこに倫理的力が働き、人間の欲望が正しい方向に制御されれば「持続的経済発展」も夢ではないかもしれない。しかし、現在の政治・経済制度には、そのような“倫理的力”が働く余地がほとんどなく、あっても十分な程度にその力は発揮されない。

そういう現状においては、社会を構成する人々の「心の中」に、その“倫理的力”を働かせるほかはない。その原動力になるのが宗教的信念であり、信仰である。(48ページ)

 私たちが「神・自然・人間は一体である」との信仰を持って、低炭素の“倫理的生活”を日常で実践することが、人々の倫理的力を呼び覚ましてゆくことに繋がっていくのです。信仰を持って生きることは、個人の運命は勿論、企業や社会、更には地球環境、そして人類の運命も変えてゆく大きな力があると言えます。

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各務洋行(かくむ・ひろゆき)
生長の家本部講師
生長の家大阪教区教化部長。自転車で神社仏閣巡りと、温泉に行くことが楽しみ。また、カウンターを使っての「感謝誦行」はこの11年で960万回を数えた。


 

特集ルポ|信仰によって自分の本当の素晴らしさに気づいた

 
高校生の時、東京大学への進学を目指し勉強していたが、受験のプレッシャーや不安によるストレスから体調を崩し、高校を中退した。
その後、高校卒業認定試験に合格し、大学進学を目指したが、次第に怠惰な生活を送るようになった。
そんな時、生長の家の教えで立ち直った人の体験談を読み、生長の家本部練成道場*1の研修生*2になった。
生長の家の教えを実践するなかで、目の前にある幸せを感じられるようになった。
*1 東京都調布市飛田給にある生長の家の施設
*2 生長の家の道場で寝泊まりしながら教えを研鑽する制度

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石井 覚(いしい・さとし)さん・23歳
東京都調布市・団体職員
取材●長谷部匡彦(本誌)

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 生長の家の教えを信仰する両親にもとに育った石井覚さんは、小学生の時に「私は神の子、光の子、いつもニコニコ、明るい子、なんでも出来ます。強い子良い子」という言葉を唱えていると、良いことがあると教わったという。

「通っていた小学校には、10歳を迎える小4になると、『2分の1成人式』と呼ばれる行事があって、母から手紙をもらったんです。そこには『覚は神の子で、無限力があるのよ』と書いてありました。でも、当時は何かおだてられているように感じ、その言葉を素直に受け入れることができませんでした」

 その頃、地元のサッカー少年団に入っていたが、試合の日に、母親に生長の家富士河口湖練成道場*3の青少年練成会*4へ連れていかれたことがあった。
*3 山梨県南都留郡富士河口湖町にある生長の家の施設
*4 合宿して教えを学び、実践するつどい

「新しい友達ができたので、練成会自体は楽しかった記憶がありますが、試合がある日なのに、練成会を優先されてしまうのが嫌で仕方ありませんでした」

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勉強が好きになる

 
 中学生になると、プロのサッカー選手になる夢を描き、技術の向上を図るために地元のクラブチームに所属した。

「クラブチームの入団テストに合格した時は嬉しかったのですが、それも束の間で、すぐに厳しいポジション争いが始まりました。しごきと思えるような練習が辛くて、次第にコーチを恐れるようになってしまったんです。家に帰ると泣いてしまうくらい辛くて、中2になったタイミングで辞めてしまいました」

 結局は、プロのサッカー選手になる夢を諦めることになったが、かえって勉強への意欲をかき立てられることになった。

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「『選手は勉強もできないといけない』というコーチの方針で、学校のテスト結果を申告していたんです。成績が悪いと練習で余計に走らされるため、必死で勉強するようになりました」

 その成果が現れ、学年で80番前後だった成績が徐々に伸びていき、中1の学期末試験では学年で1番の成績をとった。

「それがきっかけで勉強に意識が向くようになったんです。進級後も、学年トップの成績をとり続けて、高校は地元の進学校に進むことにしました」

目標にとらわれ身動きが取れなくなって

 
 高校に進学すると、なにか人と違うことがしたいと思い、両親が信仰していた生長の家の本を読み始めた。

「母から勧められて『青年の書』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊)を読むようになりました。『人間は神の最高の自己実現である』というような一節を目にしたとき、もっと高いレベルで勉強したいという情熱が湧いてきて、東京大学への進学を目指すようになりました」

 しかし、高1から受験勉強に取り組み始めたものの、必要な勉強範囲が判ってくるにつれ、不足している部分にばかり意識が向いた。「まだ全然足りていない」という思いに囚われ、ストレスを感じるようになった。

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「それでも、一度決めた目標を変えることは『逃げ』のように感じられて、志望校を変えることができませんでした」

 心が悲鳴をあげるなか勉強を続けていたが、高3になったばかりのある朝、布団から起き上がることができなくなった。2週間経っても体調が戻らず、心配した母親から、気分転換にと、東京・調布にある生長の家本部練成道場の練成会への参加を勧められた。

「講師に胸の内を打ち明けると、優しい表情で『問題を心で掴んではいけないよ』と助言してくれました。両親以外の人に初めて自分の辛い気持ちを話し、理解してもらえたことで少し心が楽になったんです。でも結局、学校には戻れず、11月に高校を中退することになりました」

自分も変われるかもしれない

 
 その後も東大進学の目標を諦めきれず、19歳の時に高卒認定試験に合格し、アルバイトをしながら勉強を続けた。しかし不安と焦りから、次第に勉強が手につかなくなっていった。

「22歳の時に東大への進学を諦め、投げやりな気持ちで静岡大学の物理学科を受験することにしたんです。1次試験の大学入試センター試験は受けたんですが、その後、自分が本当に進みたい進路だとは思えなくなり、2次試験は受けませんでした」

 目標をなくして自暴自棄になってタバコを吸い始め、酒も飲むようになった。さらには、パチンコ店に通って気を紛らわした。

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 そんなある日、いつものようにパチンコに興じ、玉もなくなって台の前でボーっとしていると、生長の家本部練成道場で教わった「実相円満誦行*5」で唱える言葉がよぎった。なにか自分を変えられるような気がして、スマホで本部練成道場のホームページを開いた。
*5 人間の本当のすがたである実相は、円満であることを念じて「実相円満完全」と繰り返し唱える行

「そこには不良として周囲から疎まれていた人が、練成会を受講したことで更生した体験が書かれていました。もしかしたら自分も変われるかもしれないと、希望の光が心に差し込むのを感じたんです」

  帰宅すると、本部練成道場の体験集『飛田給(とびたきゅう)』が届いており、手にとって読むうちに研修生募集の案内が目に留まった。

「このまま怠惰な生活を送っていても苦しいだけだから、研修生になってみようと思ったんです。それで昨年(2022)6月から道場で、教えを深く学ぶようになりました」

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「神想観をしていると、心が落ち着いていくのを感じます」(撮影●遠藤昭彦)

信仰が心を解放してくれた

 
 生長の家本部練成道場の研修生となってからは、神想観*6の実修や、聖経*7の読誦、献労*8などに取り組んだ。さらに、空いた時間に『生命の實相』(生長の家創始者・谷口雅春著、日本教文社刊)を読み始めたことで、信仰を持つことの大切さに気づいた。
*6 生長の家独得の座禅的瞑想法
*7 生長の家のお経の総称
*8 感謝の気持ちで行う労働奉仕

「『この現象世界は心の影であって本来ない。本当に在るのは神のみである』という教えが、すごく印象的でしたね。本当に在(あ)るものは善きものしかないと知った時は、とても感動しました。こうした真理を学んでいないと、たぶん自分が死ぬときに過去を振り返り、自分の人生は何だったのかと後悔してしまうのではないでしょうか。人間の本質は『善』なんだとわかって自分を認めることができました。そういう思いで世界を見れば、困っている人を助けるボランティアなど、人々の善意が満ち溢れていますね」

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「生長の家の教えを学びながら仕事が出来るのが嬉しいですね」。生長の家本部練成道場にて(撮影●遠藤昭彦)

 今年2月からは、本部練成道場の職員になった。

「宗教に対して抵抗を持たれている人もいるかと思いますが、生長の家では、恐怖心をあおる信仰は間違いであって、『人間は本来神の子で素晴らしい』と説き、心を解放するものだと教えています。すでに神様から無限の知恵や愛を与えられている存在だということに気づけば、人は変わることができます。宗教というのは、人間の内にある完全円満な本性(ほんせい)を現し出すためにあるものだと思います」

 石井さんは、優しい口調でそう語った。