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和装で成人式に出席したいという長男のために作った1枚。夫の祖父の着物では袖が短かったため、長男のジーンズを縫い足した

鳥内明美(とりうち・あけみ)さん(54歳) 岐阜県瑞穂市
取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘

着物を大胆にアレンジ


住宅街にある鳥内明美さんの自宅を訪ねると、着物をベルトで留めてアクセントをつけたファッションに身を包んだ鳥内さんが出迎えてくれた。
黒地に赤が鮮やかに映えた着物は、母親の愛用していたものという。

「着物にセーターやパンツなどの洋服と合わせて、ふだんから和洋折衷のコーディネートを楽しんでいます。帯の代わりにベルトで留めるようにすると、簡単に着れますよ」

オーダーメイドで着物を仕立てる和裁士として長年和服に関わり、着付けの講師もしている鳥内さんにとって、和服も洋服も「同じ服」。
着物というと敷居が高いイメージがあるが、「もっと自由でいいんです!」と鳥内さんは言う。

時には着付けの講師をした帰りに借りている農園に立ち寄って、着物姿のまま畑仕事に精を出すこともあり、気の置けない仲間3人と、和気あいあいと菜園ライフを楽しんでいる。

「土に触れていると自然と笑顔になって、生長の家で学んだ『人間も自然の一部であり、神のいのちにおいて一体である』ということを実感します。地球温暖化を防ぐために自転車にも乗り始めましたが、体を動かして自然と触れ合う低炭素のライフスタイルは、自然との一体感が強く意識されて、その繋がっているという感覚が、とても心地いいんです」

ベルトで留めた母親の着物に、夫の祖父の羽織を合わせて。黒地に赤が鮮やか

私にとって心地いい服


生長の家の教えを信仰する家庭で育った鳥内さんは、子どもの頃から「人間は神の子で、無限の力が宿っている」と教えられた。
テストの前にはよく「わが魂の底の底なる神よ、無限の力湧き出でよ」と唱えていたという。
高校からは生長の家の青年会(*)にも入り、以来、教えを生活の土台にしてきた。

現在は環境問題が人類にとって差し迫った課題であり、大量生産・大量消費社会が地球温暖化をはじめとする深刻な環境破壊を招いていることを、生長の家で知った。
自然に感謝し、敬う気持ちが大切だということも学び、菜園をしたり自転車を活用するだけでなく、ふだんの買い物でも環境への負荷をより意識するようになった。



「以前から綿などの肌に優しい自然素材の製品を選んだり、愛着のある物を長く使いたいという思いから、百円ショップの利用を避けていました。今は輸送にかかる二酸化炭素の排出が少なく、製造工程がしっかりしている日本製の商品を購入し、『買い過ぎない、持ち過ぎない』ことも心がけています」

服に関してはショップで購入し、流行もそれなりに取り入れてきたが、そんな生活が変わるきっかけとなったのは、2年前の新型コロナウイルスの感染拡大だった。

自粛ムードが強まり、様々な行事が中止となって着物を着る人が減った影響で、和裁士の仕事も激減。急に空いた時間をどうしようかと考えたとき、「自分のための服を作りたい」という思いが浮かんだ。
職業柄、着なくなった着物を譲ってもらう機会が多く、それらを洋服にリメイクしようと一枚の着物からパンツを作った。

「それまでどんな服を着ても、どこか私らしくないような感じがしていたんです。でも、着物から仕立てた和柄のパンツを履いて、その雰囲気に合うようにコーディネートしてみると、『私はこういうファッションが好きだったんだ!』と、本当の自分らしさを見つけたよろこびが湧いてきました。それに、物のいのちを生かすことができたのも、うれしいことでした」

物も「神のいのちの現れ」であると生長の家で学んだ鳥内さんは、どんな小さな端切れでも捨てるのがもったいないように感じ、和裁の仕事を始めて以来、ていねいに押し入れにしまってきた。
リメイクを始めてから、この小さな端切れを集めて扇模様のパッチワークを作ったら素敵かもしれないとひらめいた。

「アイデアを練る時間が何よりも楽しくて、思い立ったら夜中からでも始めてしまいます(笑)。最近は草木染めにも興味があって、衿や袖の部分が擦れてテカテカになった黒い服も、上から染め直せば生まれ変わるかもしれないと、ワクワクしています」

左/端切れを使って柄をつけたり、ブローチを作っている 右/和のコートは巻きスカートにリメイクする予定

世代を超えた服


母や義母、義祖母らが着ていた着物も手元に集まり、明治35年生まれの義祖父が着ていた黒の羽織は、今年22歳になる長男も、コーディネートに加えて出かけることもあるという。
また、今年の正月には夫の浩一さんが和装をした際に着たりと、世代を超えて愛用している。

「着物は体を包むものなので、体型が違っても、さほど違和感なく着れますし、年を重ねた今の雰囲気に合わせて色を染め直すこともできるんですよ。日本の心というか、何でも包み込んで受け入れる懐の深さが和服の魅力ですね。世代を超えて受け継がれた服を着ることは、究極のエシカルファッションだと思っています」

長男は鳥内さんの仕事を間近で見てきた影響もあったのか、洋服が大好きになったという。
自分が本当に気に入ったものを長く使いたいとよく話し、物のいのちを大切にしてほしいという鳥内さんの思いが自然と伝わっている。

「自分にぴったりなファッションを見つける一番の方法は、やはり服を手作りすることです。でも、そこまでいかなくても、ほつれたら繕ったり、たまには手洗いしたりして、そうやって手をかけていくことで愛着が増し、自分だけの特別な一着となっていくのではないでしょうか。それは物のいのちが喜び、ひいては自然の恵みを生かすことにもつながると思います」

そう語る鳥内さんのファッションは、あたたかな人柄そのものを表しているように感じられた。

* 12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織