イラスト/ろぎふじえ

イラスト/ろぎふじえ

 現在、安倍政権によって、憲法改正問題が政治テーマとして浮上してきています。同政権は国の最高法規である憲法をどのように改正しようとしているのか。主権者である私たちが、関心をもつことはとても重要なことです。なぜなら、憲法改正の手続きの最後は改正案が国民投票にかけられるからです。そうです、憲法はいかにあるべきか、最終的に主権者である私たち一人一人が問われ、判断しなければならないのです。基本的人権を尊重し、世界の平和を目指す宗教者であるなら、なおさら関心を持つ必要があるでしょう。

 そのために、本シリーズでは、憲法の基礎知識からその改正問題について、生長の家の教えに基づきながら、考えていきます。

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 立憲主義とは、「憲法によって権力を制限し、憲法を権力に遵守(じゅんしゅ)させる」ことです。権力者の都合のよいように作られたものではなく、権力者の上に存在し、権力者の行動を拘束する規範が憲法です。

 なぜこのような憲法が必要なのでしょうか? それは、こうした憲法がなければ、権力者が国民を勝手気ままに支配し、国民の人権を踏みにじる恐れがあるからです。これまで人類は、そうした失敗を数多く経験してきました。

 例えば、ドイツの三十年戦争(1618~48年)はカトリックとプロテスタントの間での内戦として勃発しましたが、諸外国が自国の利益を求めて次々に介入し、ヨーロッパ諸国の大半を巻き込む大戦争となりました。

 どうして、このような悲惨な宗教戦争が起こってしまったのでしょうか?それは、「信仰の自由」が国民一人ひとりの基本的人権として認められておらず、国民がどの宗教・宗派を信じるべきかを権力者が強制的に決めていたからです。どの宗教・宗派を信じるかを個人の良心の自由に任せるのではなく、ある一つの宗教・宗派を権力によって国民に押しつけたのです。そのため、国教と異なる宗教・宗派の信徒は権力によって弾圧されました。

 こうした宗教戦争の歴史から分かることは、私たちが人間らしい生活を送るためには、各自が大切だと思う価値観や世界観のちがいにかかわらず、お互いの存在を認め合って共存していくことが大切だということです。「信仰の自由」などの基本的人権を権力が侵害することを禁じる憲法を土台として、国を運営していくのが立憲主義の考え方ですが、それは、こうした歴史の教訓から学んだ人類の英知の結晶なのです。

参考文献 
・谷口雅宣監修『誌友会のためのブックレットシリーズ3 “人間・神の子”は立憲主義の基礎──なぜ安倍政治ではいけないのか?』(生長の家、2‌0‌1‌6年)
長谷部恭男著『憲法とは何か』(岩波新書、2‌0‌0‌6年)