他のために愛を表現するなかに、真の喜びがあります

 
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自他一体の愛

 
 人はなぜ、他の人が喜ぶことをしてあげたいと思うのでしょうか。また、他の人の苦しみや悲しみを見て、手を差し伸べたり、何か力になりたい、喜んでもらいたいという心が起きるのでしょう。

 人は肉体をもっていますが、本当の相(すがた)(実相)は神の生命(いのち)そのものであり、神の愛そのものです。また、一人ひとりはバラバラのように見えますが、心の奥底では皆つながっていて、自分と他者とは神の生命において一体であるという意識があります。この自他一体(じたいったい)の自覚こそが、真の愛です。ですから、他の人の喜ぶことをしてあげたい、もし困っていれば、手を差し伸べたいという愛の心が、自然に起きてくるのです。

 次ページに登場される川﨑眞喜子さんは、読み聞かせボランティアを20年も続けています。このように長期間できるのは、川﨑さんの読み聞かせを子どもたちが楽しみに待っていて、それが川﨑さんの喜びになっているからです。

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神の生命を生きる同胞

 
 私は4年前、福島県の豪雨災害の被災地へ、生長の家国際本部職員の災害ボランティアとして伺い、泥に浸った家財道具を搬出するお手伝いをしました。そのお宅を辞する時、感謝の言葉を掛けていただき、少しでもお役に立てたのは、本当に嬉しいことでした。

 他の人のために愛を表現する行為を通して、他の人が喜んで下さることに自分が喜べる。それは、私たちが皆、神の生命を生きる同胞であり、神の生命において一体であることが感じられ、そこに真の喜びがあるからです。

 私たちの周りの方々に、さらに、戦争や自然災害で苦しんでいる世界の方々に、私たちに内在する神の愛を実践していきましょう。
(佐藤香奈美・生長の家本部講師)

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【ルポ】愛情あふれる絵本の読み聞かせで、子どもたちに心の栄養を

 

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「子どもたちには質のよい本を選んで読んであげてほしいです」。高校で美術教師を務める長男が、高校3年生の卒業制作で創った優しい手のオブジェと共に(撮影/遠藤昭彦)

川﨑眞喜子さん(58歳) 川崎市中原区
取材/宮川由香

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 川﨑眞喜子さんは、自宅近くの小学校で週1回、朝8時30分からの10分間、絵本の読み聞かせボランティアを始めて20年になる。

「息子が通っていた小学校で、息子が2年生のときから、このボランティアを始めたんですよ」

 現在27歳になる長男が小学校に入学した頃、朝10分間の絵本の読み聞かせが始まった。その頃は在校生の母親が行っていたが、子どもが卒業すると、ベテランママさんたちも引退してしまうのは残念だと思い、川﨑さんは校長に直談判して、卒業した後も登録すれば継続更新できるシステムを作った。
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「息子が卒業しても読み聞かせボランティアを続けたいと思ったのは、子どもたちがキラキラした目をして、絵本の世界に入り込んで聴いてくれる姿が、最高に素敵で嬉しかったからです」

 川﨑さんは子どもたちへの元気な挨拶を心がけ、教室に入ると「おはようございます!」と元気に挨拶をする。すると、子どもたちからも元気のよい挨拶が返ってくる。

「そんな姿を見ると、子どもは神の子で、善なる神の生命を宿した素晴らしい存在だと生長の家で学んでいるように、どの子も皆、純粋で素晴らしいと実感します」

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川﨑さん宅の書庫には1000冊以上の蔵書がある(撮影/遠藤昭彦)

長男への読み聞かせで感じた幸福感

 
 川﨑さんは両親から、「人間は神の子である」という生長の家の教えを伝えられた。両親は戦後、南米パラグアイに移住し、川﨑さんや3人の弟たちは現地で生まれた。普段から毎朝合掌し、「お父さん、ありがとうございます! お母さん、ありがとうございます!」と言うのが習慣だった。

 下が男の子ばかりの長女で、小学校でもリーダー的存在だった川﨑さんは、明るくさっぱりした性格に育った。高校卒業後に、日本にある生長の家養心女子学薗*1に留学するときも、ほとんど不安は感じなかった。
*1 生長の家の全寮制の専門学校。現在は休校

 その後、生長の家青年会*2で出会った博文さんと平成7年に結婚。翌年に長男が誕生し、幼稚園に入る頃には長男の横にぴったり寄り添って、絵本の読み聞かせを始めた。長男との心温まるひとときが、楽しく満ち足りたものになっていき、そのときの幸福感が、小学校の読み聞かせボランティアに応募するきっかけになった。
*2 12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織

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子どもたちが好きな絵本

 
 読み聞かせのときは、子どもたちに気持ちをひきつけるよう、その学年に応じた質のよい絵本を選ぶ“選書力”も、読み聞かせボランティアの大切なポイントになると川﨑さんは言う。

 川﨑さんは選書力を高めるために、隣の宮前区で開催された「図書ボランティアのための絵本の選び方講座」を受講した。そのとき講師の向井惇子さんの話に感動し、自分の住む中原区でも講座を開催できるよう、平成25年に「中原区・子どもと本を考える会」を立ち上げ、代表を務めている。

「向井さんの講演は『「どの絵本読んだらいいですか?」』(かもがわ出版)という本にまとまっているので、ぜひ読んでいただきたいです。本当に子どもたちが喜ぶ“質のよい本”のリストも巻末に100冊載っています。力のある絵本を読んであげると、子どもたちはものすごい勢いで物語の中に入っていき、読み終えたときには放心状態になっているほどです。だから、最後に『おしまい』と言って、パンッと本を閉じ、現実に戻してあげるんですよ」

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 親の立場から教育的なメッセージや願いが込められた絵本を選んでしまいがちだが、子どもたちが好きな絵本は教訓めいた話ではなく、純粋に楽しいもの、おもしろいもの、その世界の主人公になれるものだと言う。

 ただしいくら良い絵本でも、読み手が1ページめくるごとに子どもたちの顔を見たりすると、せっかくの子どもの集中力がそこで途切れてしまうし、あまりにも大げさな表現をすると、絵本より読んでいる人の方を見てしまう。

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「あくまでも本が主役なんです。読み手は黒子(くろこ)に徹しないと。でも、たとえば、『ちいさなヒッポ』の主人公、子どものかばのヒッポが、勇気を出してグァオ! と叫ぶところなんか、つい大きな声になっちゃって、隣のクラスにまで聞こえたよ、なんて言われたりすることもあるんですけどね(笑)」

 そんな川﨑さんの読み聞かせは、子どもたちだけでなく担任教師たちにも人気がある。

「自分たちも楽しかった。また、うちのクラスに来てほしい、と言われるととても嬉しいですね」

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神の愛を表現する

 
 読み聞かせは、子どもの心を豊かに育むと言われるが、自分の子どもに読み聞かせをしてやれなかったから、思春期になって子どもに問題行動が出てきたのではないかと思う母親もいる。そんなときも、決して自分を卑下しないでほしいと川﨑さんは言う。

「『私のせいで……』と自責の念を持ち続けるのはよくありません。私たちは神の愛を宿した尊い神の子で、そんな神の子の自分をけなすのは、神をけなすことと同じですから」

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ラテン系のノリで愉快な川﨑さん。子どもたちからも「元気な図書ボランティアのおばちゃん」と大人気(撮影/遠藤昭彦)

 神の子である人間は、神の愛の表現者としてこの世に生をうけた。その愛を表現するのが人生の目的であり、愛を表現するとき、生きがいが感じられると、生長の家で学んだ川﨑さんにとって、子どもたちへの読み聞かせは、神の愛の表現だと感じている。

 それだけでなく、川﨑さん自身も子どもたちから元気をもらい、生命がよろこぶ時間となっているから、20年も続けてこられたと話す。

 そんな愛情あふれる読み聞かせで、心の栄養をたっぷりに育てば、きっと大人になってからも、子どもの頃に感じたワクワクした思いは忘れないに違いない。