特集ルポ152_写真1

穴があいた孫のズボンを補修する大西さん。「こんなになるまで履いてくれて、感激しました」

大西淳子(おおにし・じゅんこ)さん(67歳) 徳島市
取材/原口真吾(本誌) 撮影/堀 隆弘

子どもや孫の服を手づくり


 本格的な夏が始まった7月、瀬戸内海からの海風が通り抜ける住宅街にある大西淳子さん宅を訪ねると、涼しげな色合いのチュニックに身を包んだ大西さんが出迎えてくれた。端切れから仕立てた一着とのことで、他にも着なくなった昔の服をリメイクしたり、サイズ直しをしたりして、店で服を購入することはなくなったという。

「きっかけは生長の家が進めている、『買いすぎない、持ち過ぎない』新しいライフスタイルを知ったことです。それまでは安ければ同じような物を安易に購入していましたが、手持ちの服を大切に着るようにしたら、暮らしがもっと楽しく豊かになったんですよ」
 と、ほがらかな笑顔で話す。

 小学生の頃から手作りが好きだったという大西さんは、昭和56年、25歳で結婚し、子どもたちの服も手づくりするようになった。穴があいた時は自作のワッペンなどで可愛らしく補修し、サイズが合わなくなって着られなくなった後も、処分することなく思い出とともに大切にしまっていた。

siro152_rupo_2

手づくりのチュニックを着て、「カラーひも」の箱を手に。棚には、他にも出番を待っている素材がたくさん。「リメイクしたときの端切れも、補修用にしまっています」

 そんな、子どもたちが着ていた服は、東京で暮らす長女の一人息子で、5歳になる初孫のふだん着にリメイクされ、新たないのちが吹き込まれている。

「袖を落としてランニングシャツにしたり、色があせていない裏地を表にして、でも違和感がないように仕立てたりと、ひと工夫を加えています。孫の名前のイニシャルもよく入れてますね。できた服を送ると、ばっちりコーディネートした写真がLINEで送られてくるんですよ。手づくりの服を着てくれるのは幼い今だけですから、どんどん作っていきたいです」

 さらに穴があいたり、サイズが合わなくなったりすると、「何とかして!」というメモと共に服が送り返されてくる。戻ってきたズボンのひざ裏にあいた大きな穴を見つけ、「一体どうやったら、こんな所に穴があくのかしら?」と口にしながらも、初孫が元気にすくすくと成長してくれていることが、うれしくて仕方がない様子だ。

特集ルポ152_写真3

以前仕立てた子どもたちの服を、孫の恒輝くんに合わせてさらにリメイク

特集ルポ152_写真4

大西さんや子どもたちが使っていたハンカチを、裂き編みにしてコースターに。にぎやかな色合いが楽しい

自然も人もよろこぶ暮らし


 リメイクしたときに出る細かい端切れも補修のために取っておくと話し、「私って、とにかく捨てることができないんです」とはにかむ。もう使わなくなり、色あせた子どものハンカチも、大西さんの手にかかれば裂き編みのコースターに早変わりする。織物にすれば、あせた色も趣のある感じになり、長く使われてきた生地だからグラスなどの水滴もさっと吸収する。

 大西さんは小学校低学年の頃に、母親から生長の家の教えを伝えられ、「物と見えているものも、すべて神のいのちのあらわれである」と、身のまわりにある物を大切にあつかうことを教えられてきた。

「環境破壊は、自然から離れても生きていけるという人間の思い上がりから始まっていて、人間も自然の一部であることを思い返す必要があると生長の家で学びました。去年の10月に、自然との一体感を強く感じたできごとがあったんです」

特集ルポ152_写真5

経年劣化したカバをーをはずし、余り布と竹でランプシェードを自作

特集ルポ152_写真6

信徒仲間と製作した、絵本『てぶくろ』のワンシーンのクラフト作品

 大西さんが暮らす住宅街の片隅には小さな空き地があるが、長年手入れがされておらず、雑草がうっそうとしていた。見かねた大西さんが草取りを進んで引き受けた。冬に向かい肌寒くなっていたが、土に触れるとあたたかく、「土も生きていて、太陽の光を喜んでいる」という思いに深く感じ入った。

「春になると小さな草花の芽が顔を出し、鳥たちが虫をついばみに訪れていました。小さな子ども達も遊べる明るい広場になって、うれしさがこみ上げてきました」

 剪定した低木の小枝やつる植物は、捨ててしまうのはもったいないと感じ、持ち帰って自宅のベランダで乾燥させ、「冬のクリスマスリースづくりに使えるかしら」と、あれこれ思いを巡らせている。

特集ルポ152_写真7

これまでに作った数々の木工作品

特集ルポ152_写真8

部屋のあちこちには観葉植物が飾られていて、心が和む空間になっている

「捨てない生活」を広げる

 電気通信会社を62歳で退職した大西さんは、以前から興味のあった木工教室やガラス工芸のとんぼ玉教室、水泳教室に通い始めた。さらにバドミントンサークルにも入り、移動は全て自転車でと、アクティブに毎日を送っている。

 月2回の木工教室では、家にあった古いまな板や使わなくなった木製品、地元の工務店で廃棄処分となった端材などから作品づくりをしており、木の柔らかな触り心地や、糸鋸を入れるとふわりと立つ木の香りに、懐かしさや安らぎを感じている。ここでも作品完成後の細かい木片を捨てずに生かして、アクセサリーなどを作っている。

「ある日も端材を使って、本に紹介されていた動物のパズルをつくろうとしましたが、よく見ると個性的な木目があるので、それに沿って糸鋸を走らせカットし、各パーツに小さな穴を開けてみたところ、方向により生き物や人の顔に見える、不思議な面白いパズルができました」

特集ルポ152_写真9

木工とトンボ玉を組み合わせた、お手製のネックレス

「ウクライナと世界平和のために」をテーマに今年開催された、第41回生光展(生長の家主催)の手工芸品部門に、ウクライナの民話『てぶくろ』のワンシーンを立体で表現した作品「平和で暖かなみんなのお家」を製作出品した。物語に登場するウサギやクマなど、7匹の動物を信徒仲間と石に彩色するストーンペイントで表現し、てぶくろの家は家にあった布を使い、ファーの部分も毛糸で再現した。また、土台の小枝は接着剤を使わず糸で固定した。雪に見立てた飾りも、40年以上も前にセーターを編んだときの余り毛糸だという。

「おかげさまで奨励賞を頂き、驚きと喜びで胸がいっぱいになりました」

 そう声を弾ませる大西さんは、玉ねぎの皮の草木染めなど、さまざまなミニイベント(*)も企画しており、SNSで発信している。

「身近にあるものにほんの少しの工夫を加えれば、こんなステキに生まれ変わるんだと感じていただけたらうれしいですね」

 ほころびたり、色あせたり、くたびれたりした物が捨てられることなく、生まれ変わる。そんな魔法のようなリメイクを楽しむ大西さんの暮らしは、心豊かで彩りにあふれている。

* 「倫理的な生活」の意義を伝えるために、生長の家のプロジェクト型組織のメンバーが開催する少人数のイベント