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津島昌子さん(54歳) 兵庫県三田市
取材/原口真吾(本誌) 撮影/永谷正樹

寄付を通して愛を表現する

 
「コロナでいろんな活動がストップしてるけど、何か社会に貢献できることがしたいよね」

 令和2年7月、生長の家兵庫教区のフードドライブ(食品を施設や団体などに寄付する活動のこと)は、教区の白鳩会*1でのこんな一言から始まった。兵庫教区白鳩会の環境・対社会対策部長を務める津島昌子さんは、フードドライブへの思いについて、こう話す。
*1 生長の家の女性の組織

「白鳩会総裁の谷口純子先生は、ご著書や講話の中で子どもの貧困について度々触れられ、生長の家国際本部では山梨県北杜市で、食事を無料で提供する『子ども食堂』*2の取り組みを、熱心に行っています。現在の日本では子どもの7人に1人が貧困の状態にあり、フードドライブは、今まさに社会から求められているものだと思いました」
*2 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在は中止

 津島さんはチラシを作り、積極的に呼びかけを行って寄付を募った。同年9月には、第1回目となるフードドライブを行い、県内のフードバンクに食品を寄付することができた。

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 手探りの状態だったため、集まった食品の中には賞味期限が間近だったり、切れてしまっていて、寄付できないものもあった。また、お中元の一部など「いかにも処分に困っていた」というような食品も目についた。報告会の中で妹尾壽夫教化部長*3は、「不要なものではなく、自分にとって大切なものを差し出すのが、信仰者としての姿勢であり、本当の愛です」と諭(さと)した。
*3 生長の家の各教区の責任者

「食品という『物』を寄付しているように見えて、本当は『愛』を捧げる行いなんだと、ハッと気づきました。妹尾教化部長の言葉をチラシに載せると、化学調味料を使用していないものなど、相手の健康のことを考えた食品も集まって来るようになったんです。私もお子さんが喜ぶようなお菓子や、お留守番をしていて、お母さんがいなくても一人で食べられるもの、といった目線で選んだ食品を寄付しています」

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兵庫県教化部に大量の食品が集まった。作業にあたった職員や信徒の皆さん

支援の輪が広がる

 
 兵庫教区ではフードドライブは春と秋の半年ごとに行っており、食品を寄付する際に提出をお願いしている受付票には、「賞味期限が切れていませんか?」「開封されていませんか?」など、注意事項が明記されていて、初めての方でも同じ理解を持って活動に参加できるように工夫されている。

 各家庭からの食品は、県内の道場と個人宅あわせて10カ所の拠点に集められ、教化部*4と姫路市の生長の家白鷺道場の2カ所でまとめ、フードバンクへ寄付する。回を重ねるごとに支援の輪が広がり、5回目の今回は、合計315人から段ボール44箱の食品と、米約500キロが寄付された。
*4 生長の家の布教・伝道の拠点

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リレー方式で食品を運び出し、車に積み込む

 食品が集められた部屋のテーブルには手描きの絵手紙が何枚もあり、尋ねてみると、「少しでも心が安らぎますようにと、描いてもらった季節のお便りを、一緒に届けてもらっているんです」と、津島さんが教えてくれた。

 募金も今回だけで約46万円が集まった。寄付金はそのままフードバンクの活動資金として渡すのではなく、今、必要とされている物をフードバンクで聞き、購入した食品を寄付しており、とてもありがたいと喜ばれている。

「貧困に苦しんでいる家庭に食品を届けることが一番の目的ですから、ちゃんと食品という形で寄付したいと、皆で話し合いました」

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ダンボールいっぱいの食品

自他一体の思いで支援を

 
 案内チラシの裏には、食品を受け取った方からフードバンクに寄せられた手紙も掲載している。

「子どもにお菓子を買う回数も減らしていたので、とてもありがたかったです」といった切実な文面に、思わず涙ぐんだという人もいる。生の声を聞くことで、もしこれが自分の子どもや孫だったらと、意識が変わるきっかけになっている。

 津島さん自身、日本における貧困問題は、知識としてはあっても、どこか遠いことのように感じていた。しかし、実際に活動をする中で、子どものために食事を減らしているという母親のことや、大学生の中にも食事に困っている人がいることをフードバンクで聞き、子を持つ一人の母親として、他人事とは思えなくなった。

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寄付する食品に添えられた季節の絵手紙

「生長の家信徒の方だけでなく、知人や友人にもチラシを渡していますが、皆さんよろこんで協力してくれます。生長の家で『人間は神の子であり、自他一体である』と説いているように、一人でも多くの方が自分の身に置き換えてこの問題に関心をもっていただき、支援に参加してほしいと思います」

 フードバンクへ食品を届けた津島さんは、真剣な表情で代表の方が語る支援先の現状に聞き入っていた。