A 日本政府は、「自衛のための必要最小限度の実力」の保持は合憲であるとしています。

 日本国憲法は、第9条で「戦争の放棄(ほうき)」と「戦力の不保持」を規定し、徹底した平和主義の立場に立っていることは、前回触れました。そこで争点となるのが、自衛隊は「戦力」にはあたらないのかという問題です。

 そこでまず、自衛隊設立の経緯から見ていきましょう。1945年に日本は敗戦により、米国を主体とする連合軍に武装解除されました。ところが1949年に、共産党により中華人民共和国が建国されると、米国とソ連の東西両陣営の覇権(はけん)争いが極東にもおよび、1950年に朝鮮戦争が起こります。それによって日本国内の駐留軍の大半が朝鮮半島へ派兵されたため、日本の治安・防衛の空白が生じました。そこで連合国軍総司令部(GHQ)の指示により、治安維持のための警察力を補う目的で「警察予備隊」が創設されます。

主権国家のもつ「自衛権」

 翌1951年、日本は独立回復のための「サンフランシスコ平和条約」(1952 年4月発効)を連合国48カ国と結び、同時に「日米安全保障条約(旧)」に調印します。これは固有の自衛力をもたない日本が、米軍に対して駐留延長を要請し、極東の平和と安全の維持のため、日本国内とその周辺に軍隊を配備する権利を認めるものでした。そして1952 年に警察予備隊と、発足まもない海上警備隊が統合され、新たに設置された保安庁のもと、「保安隊」(陸上)と「警備隊」(海上)が編成されます。

イラスト/石橋富士子

イラスト/石橋富士子

 さらに1954年、経済援助と引き替えに、日本に対して防衛力増強を義務づける「日米相互防衛援助協定」が調印されたのを受け、保安庁から改組し設置された防衛庁のもと、国防という新たな任務を与えられた陸海空の「自衛隊」が誕生するのです。

 この自衛隊について、日本政府は憲法が主権国家に固有の「自衛権」を否定していない以上、「自衛のための必要最小限度の実力」の保持は合憲であるとしています。次回も、この自衛権について考えていきます。