A 憲法によって、国家権力を制限しながら国を運営する考え方です

 近年、憲法に関する議論がメディアで盛んに取り上げられるようになりましたが、そこで必ず登場するのが「立憲主義」というキーワードです。

 広辞苑では、「立憲主義」を、次のように定義しています。

「憲法を制定し、それに従って統治するという政治の在り方。この場合の憲法とは、人権の保障を宣言し、権力分立(けんりょくぶんりつ)を原理とする統治機構を定めた憲法を指し、そうでない場合には、外見的立憲主義という」

イラスト/石橋富士子

イラスト/石橋富士子

 このように、まず「憲法を制定し、それに従って統治するという政治の在り方」と定義した後、憲法の内容を「人権保障」「権力分立」という2つの言葉で限定しています。「権力分立」とは、国家権力(立法、行政、司法)を分散させ、互いに抑制し合い、均衡(きんこう)を保たせることで、権力の濫用(らんよう)を防ぐ仕組みのことです。

人権を守るための憲法

 現代の日本に生きる私たちは、誰もが自由と権利を与えられ、それを憲法で保障されるのは当然だと思っています。しかし、こうした社会が実現するまでに、人類がどれほどの経験と失敗を積み重ねてきたかを、考えたことがあるでしょうか。

 17世紀のイギリスでは、国王の権力に対して、人民の権利を守るために市民革命が起こり、それがやがて、18世紀のアメリカの独立やフランス革命へと発展します。そして、アメリカで世界最初の成文憲法がつくられますが、それは人間が生まれながらにして与えられている権利である「人権」を保障するためでした。

 しかしその後も、人類は人権獲得の歴史のなかで、国家権力の暴走や独裁による世界大戦によって、人権が踏みにじられる試練も経験してきました。そのため、立憲主義の思想に基づく憲法には、国家権力を制限する原理としての「人権保障」と「権力分立」が強く謳(うた)われているのです。

 次回は、日本国憲法が保障している人権について、考えていきます。