柿本真澄(かきもと・ますみ)さん 山梨県、38歳、パート 取材●長谷部匡彦(本誌) 撮影●遠藤昭彦

柿本真澄(かきもと・ますみ)さん
山梨県、38歳、パート
取材●長谷部匡彦(本誌) 撮影●遠藤昭彦

「物をたくさん買うことで満足を感じるのは、心のどこかに欠乏感があるからだと思います。本当の心の満足は、物からだけでは得られないのではないでしょうか」

 着ることができなくなった服や、壊れた物をリメイクするなど、日頃から物を大切にしている柿本真澄さんだが、不要な持ち物を減らして必要最低限の物だけで暮らす「ミニマリスト」とは少し違うと話す。

「物を減らすことを意識するのではなくて、周囲の人を敬い、一つひとつの物事に価値を見出すことを大切にしています。そうすると、既にある幸せにも気づけるようになります」 

豊かな暮らしは少しの工夫で

「ボリジというハーブの一種を育てていて、葉や花をサラダやスープに使っています」

「ボリジというハーブの一種を育てていて、葉や花をサラダやスープに使っています」

 柿本さんは結婚前、神奈川県で一人暮らしをしながら、洋服や雑貨を販売する店で働いていた。仕事を終えると、なんとなく雑貨店などに立ち寄って、漠然と買い物をしていた。

「買い物をしている間は楽しいし、一時的に満足するんですけど、また別の物が欲しくなってしまい、きりがないと感じていました。そんな時に、職場の上司から、展示ディスプレイを飾りすぎると安売りの店に見えてしまうから、展示数を絞って空間を活かすようにと指導されたんです」

 その頃から、どうしたら自分や周囲にとって、心地の良い環境をつくれるのかを考えるようになったという。

「一輪の綺麗なお花を部屋に飾ってみたら、ただそれを眺めているだけで気持ちが和んでいることに気がつき、それまでの自分の生活を省みるようになりました」

 平成26年に隆平さんと結婚したのを機に、柿本さんは山梨県に移り住んだ。

 しばらくして、使用していた炊飯器が壊れてしまったが、買い直さずに圧力鍋で代用するようになった。

夫の隆平さんと。「近隣の山野には、タラの芽や山ウド、南天萩が自生しています。隆平さんが収穫してくれるので、それらを食材やお茶などに使うことで自然の恩恵に生かされていることを感じ、感謝の思いに満たされます」

夫の隆平さんと。「近隣の山野には、タラの芽や山ウド、南天萩が自生しています。隆平さんが収穫してくれるので、それらを食材やお茶などに使うことで自然の恩恵に生かされていることを感じ、感謝の思いに満たされます」

「生長の家の『人間は完全円満な神の子である』とか、『この現象世界は仮の世界であって、物質も本来ない』といった教えに触れて、物に対する執着がなくなっていきました。それよりも、私を生かしてくれている環境や、既にある物を大事にしたいという思いになったんです」

 家電製品などがなくても、少し工夫するだけで心豊かな暮らしは送れると話す。

「家庭菜園をしていたら、子どもがトウモロコシを育ててみたいと言い出したんです。一緒に種を植え、小さな芽が成長していく様子を嬉しそうに観察している子どもの笑顔を見ていると、私も笑顔になれます。普段、子どもに手作りのお菓子を作ることがありますが、子どもの誕生日に『買ったケーキでなくていいの?』と聞いたら、『お母さんが作ってくれたケーキがいい』と言ってくれたことが嬉しかったです。物を買わなくても幸せはつくれるんだと思いました」

「本当の幸せ」を見つめて

 柿本さんは子どもと過ごす時間のなかで、「本当の幸せ」について考えさせられたという。

hidokei138_rupo_5「子どもはとても正直で、何か満たされていないと、おもちゃが欲しいとか、おやつが欲しいとか言い出します。でも、子どもに対して目と心をしっかり向けて会話をしていれば、子どもの心も満たされ、そういった欲求を忘れてしまうみたいで、物をねだることはないですね。自分を認めてくれる家族の存在が、とても大切だということを、子どもから教えられました」

 物をたくさん持たなくても、家族や友人などを「神の子」として尊重し、良い人間関係を築いていくなかで、心は幸せに満たされる、と柿本さんは話す。

「いまは新型コロナウイルスの影響で様々な制限がありますが、この状況を活かして、「何が本当の幸せなのか』について考え、自分自身を見つめなおすことが大切ですね。『人間は皆、素晴らしい神の子である』ということを自覚して、今すでにある幸せに心を向けることで、一人ひとりに合った、幸せになれる生き方が見えてくるのだと思います」