増田真理さん(45歳)  大阪府茨木市 自宅近くに借りている市民農園で、採れたばかりのナスを手にする増田さん一家 取材/多田茂樹 撮影/永谷正樹

増田真理さん(45歳) 
大阪府茨木市
自宅近くに借りている市民農園で、採れたばかりのナスを手にする増田さん一家
取材/多田茂樹 撮影/永谷正樹

一家で食を大切にする

 大阪府北部の茨木市で夫の幸隆(ゆきたか)さん、長女(8歳)、次女(6歳)、長男(4歳)の5人家族で暮らす増田真理さんが食の大切さを意識し始めたのは、次女が生まれた頃からだった。

「長女が生まれた頃は初めての出産ということもあってバタバタとしていて、食事に気をつける余裕がありませんでしたが、母親教室(*1)などで食の大切さを学ぶうちに、だんだん深く考えるようになってきたんです」

畑で採れた野菜で、次女が「茄子の照り焼きどんぶり」を作った(写真提供:増田幸隆さん)

畑で採れた野菜で、次女が「茄子の照り焼きどんぶり」を作った(写真提供:増田幸隆さん)

 肉食は動物のいのちを奪うだけでなく、食肉生産は大量の二酸化炭素を排出し、さらに家畜に穀物飼料が与えられるために飢餓問題の原因となっていることを知り、野菜中心のノーミート料理に切り替えた。さらに食材を選ぶ際は、地元のもの、旬のものを心がけるようになった。

 これは、幸隆さんの祖父母と母親の影響も大きいという。祖母は家で野菜を育てながら、ぬか漬けなどの郷土料理を作るのが得意で、母親はベランダ菜園でイチゴやミニトマトなどを育てている。また、相愛会員(*2)の幸隆さんも、生長の家のSNIオーガニック菜園部(*3)のメンバーとして積極的な活動を続けている。

「私は三重県出身で、祖父から『人間は神の子である』と説く生長の家の教えを伝えられて、20代後半から生長の家青年会(*4)で伝道などの活動を始めました。主人とは生長の家のSNSサイト『ポスティングジョイ』(*5)で知り合い、互いに讃嘆し合っているうちに結婚にまで至りました」

 結婚後、増田家では食事の前に、生長の家の神示(*6)の一つである「生長の家の食事」を唱えてきた。子どもが成長してからは、『こどもの祈り』(谷口雅春著、生長の家本部編、日本教文社刊。現在品切れ中)にある次の「食事の時のお祈り」を子どもの先導で家族皆で唱えている。

食事の時のお祈り
 神さま、このお食事はみな神さまから与えられ、父母(ちちはは)の愛を通して、わたし達がすこやかに成長するために与えられたものであります。神さまの愛の結晶、父母の愛の結晶であります。これをおいしく食べて毎日一層すこやかに、一層“神の子”らしく立派に成長して行きます。神さま、ありがとうございます。お父さん、お母さん、ありがとうございます。


 増田さんが食に関心をもつようになると、子どもたちも料理に興味を示し始め、親子で一緒に料理をする機会が増えた。幸隆さんの両親も近所に住んでいるので、3世代で台所に立つこともあり、幸せを感じている。

1年生の次女が作成した夏休みの自由研究作品。野菜を育てながら、地球を考えるものになった

1年生の次女が作成した夏休みの自由研究作品。野菜を育てながら、地球を考えるものになった

「よく『母の味』と言いますが、うちの場合は義母から料理を教わることが多いので、子どもたちにとっては『おばあちゃんの味』と言う方がいいみたいですね。子どもたちは皆、料理に興味があるようですが、一番台所が好きなのは次女です。私が料理しているとすぐに手伝いをしたがります。長女はお花が大好きで、義母と一緒に庭で季節の花を育てて楽しんだりしています。そして長男は、とにかく生き物好きです」

 今年(2021)4月からは自宅近くにある市民農園を借りて、家族で本格的に無農薬・有機栽培の野菜作りを始めた。

「畑は歩いて2分ぐらいのところにあり、毎朝子どもたちが登校する前や夕方に、一緒に水やりを欠かしません。子どもたちは野菜作りそのものより、畑で近所のおじいさん、おばあさんたちに会っていろいろな話をするのが楽しいようです。世代を超えたお付き合いができて嬉しい限りです」

 この畑で今年の夏に収穫したのは、トマト、ナス、キュウリ、オクラ、ニンジン、枝豆など。そして秋から冬にかけては、大根、春菊、白菜、ブロッコリーなどを育てている。

 今、増田家の子どもたちが一番好きなのが、畑で採れた野菜を使ったぬか漬けだという。お祖父ちゃん秘伝のぬか床に、キュウリ、ニンジン、大根、白菜などを漬け込むと、風味豊かなぬか漬けになる。それだけでなく、保存食や発酵食品作りも祖父母から教えてもらい、子どもたちは料理の知識を深めている。

野菜も虫も、同じいのちを生きる仲間

 子どもたちは、畑に集まる虫やカエルなども大好きだ。庭にある金柑の木にはチョウの幼虫が付き、葉っぱを食べるが、特に駆除せずにそのまま飼育することにしている。

 子どもたちは、そんな幼虫を観察し、羽化してアゲハチョウになって羽ばたくまで見届け、『こども日時計日記』(生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修、生長の家刊)に観察記録を付けた。子どもたちにしてみれば、虫も植物もみんな一緒の生き物で、人間の仲間と捉えている。

羽化したアゲハチョウ(写真提供:増田幸隆さん)

羽化したアゲハチョウ(写真提供:増田幸隆さん)

「畑での野菜作りや虫の観察を通じて、いのちはすべて一緒ということが実感として分かってきているようで、本当に教育に良いと感じています。『人間にはお医者さんがいるけど、野菜にはお医者さんがいなくて薬を飲んだりもしないから、こっちが野菜の気持ちになって考えながら育てなきゃいけないね』などと、親が感心するようなことを言うようになりました」

 今年の夏、次女は畑の野菜が種から植えて花が咲き、実をつけるまでを見届け、家の畑で作った夏野菜の育て方や無農薬栽培、有機栽培について調べて、夏休みの自由研究にまとめた。種や苗、花、そして実った野菜を写真に撮って一覧にした立派な自由研究だ。

 長男は、野菜嫌いな友達に食べてほしいからとナスとピーマンを植え、畑で採れたナスを友達にお裾分けした。その友達は野菜嫌いを克服すると、長男に約束してくれたそうだ。長男は一本のナスをプレゼントのようにラッピングし、「海ガメさんが間違ってレジ袋を食べて苦しむと嫌だから、友達にもレジ袋の環境問題をおしえてあげるんだ」とレジ袋は使わず、取っておいた紙袋を再利用して渡したそうだ。野菜作りは、食育だけでなく4歳の長男の心に純粋な愛も育んでくれた。

 愛情の込もった食や野菜作りを通して、手作りの味の記憶が胸に刻まれた増田家の子どもたちの心には、自然のいのちへの思いやりも生まれ、これからの人生を豊かに築いていく土台となるに違いない。

*1 母親のための生長の家の勉強会
*2 生長の家の男性の組織
*3 生長の家が行っているPBS(プロジェクト型組織)の一つ
*4 12歳以上40歳未満の生長の家の青年男女の組織
*5 平成28年9月30日をもって終了した
*6 生長の家創始者・谷口雅春先生に下された言葉